(2024/11/8 05:00)
米大統領にトランプ前大統領が返り咲くことで、日本にも経済や安全保障で少なからぬ影響が及ぶ。円安進行、追加関税、電気自動車(EV)政策の見直し、防衛費の増額などが想定され、課題が山積する。日本製鉄によるUSスチール買収の行方も気がかりだ。トランプ氏の言動は予測が難しく、石破茂政権と日本企業の対応力が問われる4年間になると覚悟したい。
トランプ氏の公約には、大規模な減税や歳出が並び、物価が上昇しやすい。加えて、追加関税を課す保護貿易は輸入物価を上昇させ、移民制限は米国の人件費を高騰させる。米長期金利も上昇し、円安に傾きやすい。日本は円安による輸入物価上昇で、実質賃金の伸びが鈍る。日銀による利上げなど、適時適切な政策対応が求められよう。
保護主義も日本企業に影を落とす。一律10―20%の追加関税は日本も例外でない。またメキシコからの輸入車に200%超の関税を課すことも示唆しており、日本メーカーが生産体制見直しを迫られる可能性もある。中国には一律60%関税を検討している。米中対立が日本経済に及ぼす影響にも警戒したい。
トランプ氏は、日本製鉄によるUSスチール買収も認めない意向を示す。同買収がUSスチールおよび米国経済に資することを、日本政府と日鉄は粘り強くトランプ政権に説きたい。
バイデン政権のEV推進策も見直され、補助金廃止などが視野に入る。ガソリン車より部品点数が少ないEVは雇用を脅かす、との労働組合の訴えに配慮したものとみられる。米国で大規模投資を行ってきた日本メーカーへの影響が懸念される。
安全保障分野では、米軍の駐留経費の増額を求められる可能性がある。トランプ氏は集団安全保障より、応分の負担を求める2国間協定を重視する。外交をビジネスのディール(取引)にように捉えて国益を追求するのは、保護貿易と共通する。
石破首相は、トランプ氏との会談を調整中という。日米同盟の重要性を確認するのはもとより、日米の健全な発展に向けた地ならしを早期に行いたい。
(2024/11/8 05:00)