社説/総合経済対策“巨費”に見合う効果はあるのか

(2024/11/25 05:00)

物価高対策などを盛り込んだ総合経済対策が22日、閣議決定された。民間支出を含む事業規模は39兆円、2024年度補正予算案は13・9兆円に達し、岸田文雄前政権による前年度の総合経済対策を上回る。国民民主党が求める「年収103万円の壁」の見直しも25年度税制改正で議論され、財政はさらに悪化する。巨費を投じ、賃金と消費が増加する効果を果たして誘発できるのか。巨費もさることながら、その効果こそ問われる。

賃金の上昇が物価の上昇に追い付いていない。物価高対策を講じ、経済好循環を回す発想は適切だ。ただ石破茂首相は衆院選で、24年度補正予算案は前年度を上回ると早々に明言していた。効果よりも「規模ありき」を優先した感は否めない。年末に編成する25年度当初予算案は24年度補正予算案と重複がないよう、精査する必要がある。

今回の総合経済対策は、岸田前政権による1年前の対策と似ており、それゆえ効果には不透明感が残る。岸田前政権が6月に始めた定額減税などの効果は一過性で、個人消費の力強さを欠く24年度の実質成長率は0・7%にとどまる見通しだ。今回の対策では住民税非課税世帯への3万円給付や電気・ガス補助金の延長などを講じる。経済好循環につながるか見極めたい。

今回の対策には物価高対策のほか、成長戦略や国民の安心・安全確保も盛った。能登半島地震からの復旧・復興などは緊急性を要する補正予算で措置すべきだが、本来なら当初予算に盛るべき内容も散見される。補正予算が当初予算の“隠れみの”になっていないか懸念される。

「年収103万円の壁」の見直しも、どこまで「働き控え」が緩和するかは見通しにくい。税収の大幅な目減りも心配だ。社会保険料負担が発生する年収106万円、130万円の壁とともに議論を深め、働き控えの問題を根本的に解消したい。

28日召集の臨時国会は、103万円の壁の落とし所と政治資金規正法再改正の行方が焦点になる。政治改革に道筋を付け、費用対効果に目配りした「壁」のあり方を模索してほしい。

(2024/11/25 05:00)

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