(2024/11/26 05:00)
気候変動問題をめぐり、先進国が途上国への支援を増やす。2035年までに年3000億ドル(約46兆円)を拠出し、現在より3倍に拡大する。24日までアゼルバイジャンで開かれていた国連の気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)で決まった。途上国が求める年1兆ドルとの妥協の産物だが、参加国が環境対応の歩みを進めることを確認できた意義は大きい。
ただ大きな“宿題”が残る。トランプ米次期政権がパリ協定(気候変動問題に関する国際的枠組み)から再離脱し、途上国への資金供与にも影響が及びかねない。先進国は最大の温室効果ガス(GHG)排出国の中国や産油国にも資金拠出を求めるが、実現しない。気候変動をめぐる国際協調をいかに再構築するか、パリ協定採択から10年となる2025年の課題になる。
環境被害対応を急ぐ途上国に対し、先進国は「気候資金」を拠出している。09年に年1000億ドル(約15兆円)支援することを決めたが、25年以降については見直すことになっていた。
今回のCOP29では資金を35年までに3倍に増やし、官民による支援を1・3兆ドル(約200兆円)とする目標も採択された。COP29は会期が2日延長されるなど、各国の利害から議論は紛糾した。だが落とし所を探り、気候変動をめぐる国際協調を維持できたと評価したい。
ただ、その国際協調の先行きは危うい。19日閉幕した20カ国・地域首脳会議(G20サミット)では、パリ協定の完全な実施を確認し、トランプ米次期政権をけん制した。排出大国の中国も、気候変動問題では途上国側の立ち位置を崩さず、途上国支援は財源面での懸念が残る。
気候変動対策は待ったなしの状況だ。産業革命からの気温上昇を1・5度Cに抑えるには、35年の温室効果ガス排出量を19年比60%削減する必要がある。パリ協定参加国は25年2月までに、35年に向けた排出削減目標を国連に提出する義務がある。日本を含め、参加国はどこまで野心的な目標を提示できるのか、米国の動向とともに国際協調が大きな正念場を迎える。
(2024/11/26 05:00)
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