(2025/1/8 05:00)
TOB(株式公開買い付け)に動く企業が増えている。自社では完結しない新サービスの開拓や、周辺事業の深耕、海外への販路拡大などを目的に、経営権を取得する事例が相次ぐ。日本経済は縮小均衡から拡大均衡への転換が求められ、こうした動きが加速することを期待したい。経済産業省の行動指針に基づく「同意なき買収」も、「新たな成長軌道」を描くための選択肢の一つとして、その効果に期待しつつ動向を注視したい。
パロマ・リームホールディングス(HD)は6日、富士通ゼネラルをTOBにより買収すると発表した。給湯器と空調事業を展開するパロマ・リームHDは、空調機器の富士通ゼネラルを取り込み、世界戦略を強化する。2024年のキリンHDによるファンケルへのTOBも、化粧品や健康食品の海外事業強化が狙いだった。いずれも企業価値向上を目指すグローバル戦略で、その成果が期待される。
24年はKDDIがローソンに対し、第一生命HDが福利厚生サービスのベネフィット・ワンにTOBを実施した。携帯電話は市場が成熟し、コンビニは人手不足、生保は国内市場が伸び悩む中、既存事業にとどまらない新たな経済圏を模索する。拡大均衡への戦略と評価したい。
この第一生命HDや、ニデックが24年末に発表した牧野フライス製作所へのTOBはいずれも「同意なき買収」である。経産省が23年に示した「企業買収における行動指針」が呼び水となっている。行動指針は、買収する側とされる側双方の企業価値を向上させる買収提案については、提案を受けた企業が真摯(しんし)に検討するよう求めている。経営者の保身などを目的とした買収防衛策の乱用を防ぎ、日本企業の資本効率改善に資する買収が促されると期待したい。
他方、カナダの流通大手、アリマンタシォン・クシュタールによるセブン&アイ・HDへの7兆円規模の買収提案は、産業界に大きな衝撃を与えた。巨大企業も外資の標的となる。日本企業は外資を買う側でなく、買収される側に回る可能性があることにも留意する必要がある。
(2025/1/8 05:00)
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