(2025/1/6 05:00)
本賞
アイダエンジニアリング/金属セパレーター成形専用機 BEXシリーズ
たわみ量を半減 寸法公差数マイクロメートル
燃料電池などの金属セパレーターの成形に特化したプレス機。燃料の水素や酸素の流路となる微細な溝を厚さ0・1ミリメートルの薄板に精密に成形するため、プレス中央で荷重を高精度に発生させる構造や超高剛性のフレームを採用した。同社精密プレス機と比べて剛性を約2倍に高め、土台となるベッドのたわみ量を約半分に抑えるなどし、相対寸法公差が数マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の高精度な溝の成形を実現した。
多数の工程を設けて複雑な形状を成形するため、広い加工エリアも確保し、薄板の反りを抑えるなど各工程の加工精度も高めた。燃料電池車(FCV)や家庭用燃料電池だけでなく、水電解装置用の大型金属セパレーターなど幅広い成形に対応する。
本賞
アサヒビール/レモンスライス装入システム DFCE-L01~製造商品「未来のレモンサワー」~
高速搬送の缶に 一枚ずつレモン
世界初のレモンスライス入り低アルコール缶「未来のレモンサワー」にスライスしたレモンを装入するシステム。乾燥レモンスライスの形状のバラつきをカメラで認識し、ロボットハンドが正確に吸着して、高速搬送中の缶に一枚ずつ装入する。システムはゼロからの開発となり、レモンスライスの形状把握カメラや吸着のための特殊パッド、高速処理などを含む多くの技術課題を克服した。さらに、複数のパラレルリンクロボットとAIによる検査を駆使することで、1分間に600本を製造可能とし、量産化に必要な製造スピードも確保した。飲料缶は販売2週間で初回出荷量の35万ケースが完売し、システムは飲料業界の技術力向上と発展、市場創造に大きく寄与した。
本賞
オークマ/新しい形のものづくりを実現する小型横形マシニングセンタ MS-320H
垂直のテーブル 切り粉問題解消
多様な形態の自動化を可能にした小型横型マシニングセンター(MC)。250ミリメートル角以下の小物部品加工に最適化し、テーブルを垂直に配置する革新的な構造にした。これによりテーブル上面や治具に切り粉を堆積させないようにし、自動化のネックとなる切り粉トラブルを排除した。
また、ローダーを機上に配置したコンパクトな自動化を実現する。自動化システムを含めた設置スペースは従来機比52%縮小。ローダー走行部の機械高さを旋盤と同等にして、単一ローダーによる加工部品の搬送を可能にし、旋盤との混成ラインの構築も容易にした。同社製の移動式協働ロボット「OMR」との接続による多品種少量生産の自動化にも対応する。
本賞
島津製作所/ガスクロマトグラフ質量分析計「GCMS-QP2050」
内部機構を刷新 感度・耐久性向上
試料を原子・分子レベルに分けて測定することで、気体試料中に含まれる化合物の種類と量を調べる分析装置。従来製品から内部機構の設計を根本的に見直し、感度を従来比約2・5倍、耐久性は同約2倍に向上した。長期にわたって、安定して信頼性の高い測定データを提供する。
試料のイオン化に必要な電子を放出する部品を長寿命化し、メンテナンス頻度を従来比最大80%低減した。試料をイオン化するイオン源の構造も簡素になり、メンテナンス時間を従来の約25分から1分程度に短縮できる。
質量分析部の装置幅は業界最小クラスの280ミリメートルとコンパクトに設計した。環境やライフサイエンスなど多様な分野の研究開発や品質管理に対応する。
本賞
ソディック/リニアモータ駆動 超精密ワイヤ放電加工機「AX350L iGroove+Edition」
ワイヤ低速回転 未消耗面で加工
リニアモーターで駆動する油加工液仕様のワイヤ放電加工機。機械構造解析技術などにより機械変位を最小限に抑える構造を実現した。ワイヤを緩やかに回転させながら加工する独自機構を搭載。未消耗のワイヤ表面で加工し、高精度な加工寸法や高い品質の加工面を安定して得られる。
放電波形を細かく制御し、高いエネルギーでも断線を抑えた荒加工が可能。ポンプなどの制御を最適化し、消費電力を従来比10%削減した。形状精度プラスマイナス1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)、面粗さ(Ra)0・02マイクロメートル程度の超精密な加工に対応しつつ、150時間におよぶ完全無人加工を実現した。電気自動車(EV)や半導体パッケージのプレス部品向け精密金型などの加工に対応する。
本賞
ダイヘン/溶接機 Welbee The Short Arc WB-M350S
金属粒8割抑制 後処理も容易に
独自の電流波形制御などを採用し、安定したアークと低スパッタ(溶接時に飛散する金属粒)を実現できる半自動溶接機。手振れや溶接姿勢などの影響を抑え、熟練工でなくても高品質で安定したアーク溶接が行える。低スパッタモードを標準搭載し、スパッタ発生量は従来機より最大80%抑制でき、後処理も容易にした。
多様な業界で使う電流350アンペアタイプ。7インチの大型タッチパネル搭載で情報が見やすく、初心者をサポートする溶接アドバイザー機能や最適な溶接条件を簡易設定できるガイド機能も付属。最大100件の溶接条件を記憶できる。溶接トーチは握りやすい形状に一新。複数機種を新機種に統合し生産コストを下げ、価格も抑制した。
本賞
ファナック/製造現場を革新する新世代CNC「FANUC Series 500i-A」
ソフト並列処理 制御性能2.7倍
コンピューター数値制御(CNC)装置「シリーズ500i―A」は、労働力不足や熟練技術者の世代交代、産業構造の変化といった環境変化に対応し、工作機械メーカーに加え現場の機械利用者の生産性向上を実現する。制御用エンジンはCNCソフトウエアの完全並列処理化により従来比2・7倍の処理性能を実現する。また同時5軸制御機能を一新し、プログラム指令の自由度向上や手動運転による段取りを使いやすくするとともに、多様な機械構成への対応も簡単に実現できる。
また加工現場の作業性を追求した新しい操作画面を標準搭載する。段取り・加工で使用する画面を統合して作業性を向上。タッチ操作による直感的な操作性に改善した。
本賞
牧野フライス精機/高精密CNC極小径工具研削盤 DB1
ワーク自動交換 長時間連続加工
高精密コンピューター数値制御(CNC)極小径工具研削盤で、対象工具径は直径0・03ミリ―4・0ミリメートル。自動ワーク交換装置を搭載し、直径3ミリメートルのワークであれば最大520本収納可能。長時間の連続加工に対応する。パレットは引き出し式で、ワーク交換作業を容易にした。稼働状況を確認しやすい大型窓を採用し、機械正面から交換装置の動作確認を行える。
X・Y・Zの直線3軸は、指令値と実際に動いた座標値との誤差が小さい「フルクローズドループ制御」によって位置決め精度を高めた。回転軸のA軸とW軸にはダイレクトドライブモーターを採用し、高精度な割り出しを実現。高まる極小径工具の研削のニーズに応える。
本賞
三菱電機/三菱電機リニアトラックシステム MTR-Sシリーズ
直線・曲線に対応 毎秒4mで搬送
従来のベルトコンベヤー式に代わる搬送方式として、リニア方式によりキャリア(可動子)を浮遊させ、加工対象物(ワーク)を運ぶリニアトラックの新製品。今回、直線・曲線形状に適したリニアモーター、リニアスケールを新たに開発した。
搬送速度は最大毎秒4メートルで、最大48台のキャリアを独立して駆動できる。制御技術で搬送物の振動も抑えており、高速・高精度の搬送が可能。長寿命化も特徴だ。また、複数モジュールを組み合わせることで柔軟なライン設計ができ、装置の小型化も実現できる。
さらに三菱電機の工場自動化(FA)製品と接続することにより、同期制御による周辺軸との高精度なモーション制御も可能だ。
本賞
安川電機/自律ロボット MOTOMAN NEXTシリーズ
ロボが自律作業 非製造業も支援
安川電機の「MOTOMAN NEXT(モートマンネクスト)シリーズ」は、人手作業が避けられない“未自動化領域”の自動化実現を目指す戦略製品。ロボットが周囲の状況を把握・判断しながら指示された作業を行う。製造業だけでなく、作業環境が変化する物流や医療、飲食といった非製造業領域までの自動化を支援する。
ロボット業界で初めて自律制御ユニットをコントローラー内に標準搭載、顧客のノウハウと融合することで自律作業を実現した。
またオープンプラットフォームを準備することで、人工知能(AI)ベンダーの技術導入の障壁を下げ、継続的な進化を可能にした。可搬質量は4キロ―35キログラムの5機種を用意した。
日本力(にっぽんぶらんど)賞
住友重機械工業・住友重機械搬送システム/生産性向上支援DXツール SIRMS
クレーン稼働を把握
造船用クレーンの稼働状況や配置情報、動作回数などの稼働データを可視化し、即時に稼働状況を確認できる。操業計画と実績の差異が把握しやすくなり、問題が生じた際の原因究明や作業の効率化を早期に実現する。対象は造船所で使われるジブクレーンやゴライアスクレーン(門型クレーン)。稼働データを分析することで作業の効率化など生産性を向上できる。稼働データは自動的に住友重機械グループの専用クラウドに転送される。稼働状況以外にも故障履歴や作業計画、点検履歴、予備品情報など全稼働データを可視化する。蓄積データは、クラウドを通じて同社にも共有される。故障時の早期復旧支援や部品交換などの保守管理などに対応する。
日本力(にっぽんぶらんど)賞
日立製作所・日立ハイテク/LABOSPECT 006α 日立自動分析装置
調整・洗浄 人手省く
血液の生化学分析を自動で実施する製品。従来自社製品に比べ、測定前作業やメンテナンスを大幅に省力化できる特徴を持つ。日々の調整(キャリブレーション)を分析装置の起動時に自動で行うほか、手作業で行っていた洗浄作業の自動化、さらに装置内の洗浄能力を向上させることで、洗浄作業の省力化を可能にし、検査技師の負担を軽減した。
また、製品を継続して稼働するには消耗品である試薬や洗剤類を切らさないように検査技師が確認・補充する必要があるが、試薬交換予約機能なども備えた。さらに遠隔で装置状態の監視を可能にするクラウドサービスと連携している。将来的には装置の異常を予見する予防保全の実現も視野に入れる。
日本力(にっぽんぶらんど)賞
不二越/同期モータ搭載省エネ油圧ユニット NSパック type-S
消費電力74%削減
同期モータ搭載新型省エネ油圧ユニットは、可変容量ポンプとインバーター制御により、最もエネルギー効率が良い運転状態を自動選択する。また油の漏れを減らすなど油圧ポンプのエネルギー効率の改善と高効率の同期モーターの採用により消費電力を最大で74%削減する。
独自構造の冷却システムを搭載することで、作動油の温度上昇を室温に5度Cを加えた温度以下に抑制する。機械の温度上昇を抑えることで加工精度が向上するとともに、作動油の劣化軽減により突発的なトラブルを防ぐ。また連続加圧時の騒音レベルは54デシベルと静かで快適な職場環境を実現する。体積比で従来の油圧ユニットから12%小型化し、設置の自由度も向上した。
モノづくり賞
SMC/無線オートスイッチ(磁気式 アクチュエータ位置検出センサ)
給電・通信 途絶防ぐ
無線オートスイッチは無線給電・無線通信で利用できるエアシリンダー向け製品。給電や通信のオール無線化によって、断線による工場での一時的な停止をなくせることでメンテナンス費用などを削減できる。ロボットや自動車の分野をはじめとする工場自動化(FA)向けに訴求する。
従来は無線通信に対応していたオートスイッチに、新たに無線給電機能を搭載した。電波を発射して受信した電波のエネルギーを、電力に変換することによって送電する。
給電と通信を無線化することで断線によるトラブルリスクや配線の空間確保の手間、配線工数が不要になるほか、配線劣化によるスイッチの故障も防げる。メンテナンス性も高まり、人件費の削減にもつなげられる。
モノづくり賞
ユアサ商事/AI外観検査装置 F[ai]ND OUT EXW
良品学習AIを搭載
人工知能(AI)を活用した外観検査装置。AIは良品を学習する仕組みで、不良品を大量にそろえる手間を省いた。カメラや照明、AI用のパソコンなど必要な機能をすべて装置に盛り込んだ。
同装置を製造ラインに設置し、ベルトコンベヤーを流れる良品を数十個程度撮影。その画像を学習していき、良品と異なる特徴を異常と判定するAIを生成する。判定対象は異物の混入や色ムラなどで、撮影から30分程度で性能評価ができる。
製造ラインの上下に備え付けたカメラで連続撮影することで、表裏両面同時に検査が可能。せんべいなどの食品業界や金属部品向けに提案し、熟練者に頼っていた加工品の目視検査の自動化のほか、検査品質の安定や効率化に貢献する。
(2025/1/6 05:00)