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(2018/6/19)
カテゴリ:調査レポート
リリース発行企業:Ascender Capital Ltd.
ー 住友電設の事業は素晴らしいが著しい過剰資本の状態である
ー 現在の10.4%のROEは3倍以上になり得る
ー 過度の現預金、および親会社への貸付について経営陣から一切の説明がない
ー 親会社への貸付金の回収、特別配当、配当性向の引き上げを求める
日本を含むアジアの投資機会に注力する香港拠点のバリュー株投資ファンド、アセンダー・キャピタル・リミテッド(以下、アセンダー・キャピタル)は、住友電設株式会社(以下、住友電設)の株式の約0.8%を保有する長期保有株主です。アセンダー・キャピタルは投資先企業との建設的なエンゲージメントを通じ、全てのステークホルダーにとっての企業価値の向上を達成した実績を有しています。例えば、2013年から2014年にかけて、アセンダー・キャピタルはBPカストロール株式会社の経営陣への改善提案を通じ、同社の企業価値を引き上げる上で大きな役割を果たし、結果的に株価へ大きなプラスの影響を与えました。
日本版スチューワードシップコード、及びグローバルベストプラクティスの導入に至った理念に従い、2017年11月よりアセンダー・キャピタルは住友電設との対話を試み、経営陣に対しガバナンス及び資本配分の問題に対応するよう提案しました。
2018年度の住友電設の業績は、売上高が7%、営業利益が約20%上昇し、一貫した収益性の向上を続けており、堅調です。しかしながら、アセンダー・キャピタルの分析では、資本配分の問題をおざなりにしてきたことで、住友電設は著しい過剰資本の状態に陥っており、素晴らしい事業モデルと経営力があるにも関わらず、競合他社と比較して過小評価されています。
アセンダー・キャピタルは住友電設の経営陣に書簡を送付し、大阪で会社の代表者と面会しましたが、我々に対して直接的にも、公式の場においても、これらの問題に関する決定的な情報や分析、または戦略的な意図について一切の説明はありませんでした。
2018年6月26日に年次株主総会も迫っていることから、アセンダー・キャピタルは住友電設に関する分析、及び改善へ向けた提案を公開することがすべてのステークホルダーの利益になると考えました。
アセンダー・キャピタルは住友電設へ以下の手順を踏むことを提案しました。
1. 親会社である住友電気工業への貸付金を直ちに回収
2. 現預金を競合他社の水準に合わせるため、特別配当を実施
3. 軽量化した資本水準でも運営可能な住友電設の事業モデルを反映し、80%へ配当性向を引き上げ
アセンダー・キャピタルからの提案の背景
バランスシート
住友電設のバランスシートは非中核事業に関連する資産を中心に資本過剰状態となっています。現預金の額は2018年度に27%増加し、総株主資本の51.7%相当にまで達していました。これは既に過剰水準であった前年度の48.7%を上回るものであり、親会社と同水準です。
本質的に資本の水準を低く留めておくことのできる事業であるにも関わらず、住友電設の株主資本に占める現預金や現金同等物は業界平均の2倍以上の水準です。
また、同業界に属する企業のうち、親会社に貸付を行っている企業は住友電設だけです。親会社である住友電気工業への貸付金として計上することで、住友電設は同社の流用可能な資金を効果的にその他流動資産に紛れ込ませることを可能としています。これは同社の独立性に悪影響を与えます。すなわち、同社のコーポレート・ガバナンスの劣化であると言えるでしょう。
ROEへの影響
2018年度決算のROEは、現預金と親会社への貸付金を含む非中核資産が27%も増加したため、純利益が24%増加したにもかかわらず、9.7%から10.4%へと微増にとどまっています。
住友電設のROEの水準は同社の実力からみると大幅に低い水準です。アセンダー・キャピタルの試算では住友電設の必要資本の低さと営業マージンを考慮してコアROEは40%近い水準を達成することが可能であると考えています。
企業価値評価への影響
結果として、住友電設のEV/EBIT倍率は4倍であり、業界平均を上回るべきほどの同社の素晴らしい業績にもかかわらず業界平均の半分程度に留まっています。
配当政策
住友電設は2018年度の配当額を19%引き上げることを提案しています。しかし、これは同年の純利益が24%上昇したことを勘案すると、実際には配当性向が28%から26%へ下がり、配当利回りは2.5%へ下がったことを意味します。住友電設が配当性向を弊社の提案した80%にした場合、配当利回りは現在の株価をベースに7.7%を上回るでしょう。
アセンダー・キャピタルについて
[創業年]2012年12月
[所在地]香港
[創業者]Edouard Mercier (CIO)
アセンダー・キャピタルは日本を始めとするアジア全域においてバリュー投資を行う香港を拠点とする運用会社です。収益性と成長力を持つクオリティ企業に注力しています。
※本リリースは同日発表の英語リリースの抄訳版です。
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