[ オピニオン ]

社説/流通業の人手不足−業務を効率化・合理化する好機に

(2015/12/3 05:00)

産業界では多くの業界で人手不足が続いている。中でも流通業界の不足は深刻だ。大手の食品スーパーではパートやアルバイトの雇用年限を70歳以上に引き上げ、習熟度の高い従業員を長期確保する動きもみられる。しかし人手不足の解消が見込みにくい中にあっては、もう一度、業務を抜本的に見直して店舗運営の効率化・合理化を進める好機ではないだろうか。これを機に流通のイノベーションが進むことを期待したい。

マルエツは最近、パート、アルバイトでも本人に働く意欲があるならば70歳以上でも継続して勤務したり、新規に採用もできたりするようにした。65歳から70歳への延長勤務は他業界でもみられるが、70歳以上の雇用は異例だ。

習熟度も仕事に対するロイヤルティーも高い高齢者の活用は、政府が提唱する「1億総活躍社会」に合致する。習得した技術や、知見が生かせることも望ましい。高齢化が加速すれば、70歳以上の雇用延長は珍しくなくなるだろう。しかし目下の人手不足は、流通業界にとってビジネスモデルのあり方を見直す好機といえないか。

日本ショッピングセンター協会は「人材確保小委員会」を設置、人手不足問題に対応している。郊外にある大型のショッピングセンターは、通勤手段の制約から都市部の商業施設に比べ人手確保が容易ではない。そのためテナントと施設の開発業者が協力し、人手確保に向けた知恵を出し合う。こうした場で、短期的な人材確保と並行してビジネスモデルももう一度見直してはどうか。

店舗としての機能を変えることなく、仕入れから運営までを効率化するのもひとつの手だろう。それ以外にも、例えば一部衣料品の専門店では店頭在庫を持たず、サンプルだけにして商品を在庫スペースに収納する仕組みを導入した。衣料品を畳み直して陳列するなどの手間暇がかかる作業を削減するためで、従業員は接客に専念する取り組みも始まっている。

労働生産人口の長期的な減少は確実だ。既成概念にとらわれることなく、新しい仕組みを構築する好機は人手不足にある。

(2015/12/3 05:00)

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