[ その他 ]
(2015/12/18 05:00)
寒さがしみる季節。秋に収穫した新米で日本酒を仕込む「寒造り」が各地の酒蔵で行われ、これから年明けにかけて新酒が出回る本番となる▼新酒ならではのすがすがしい味わいも格別だが、同時に出回る酒粕(かす)を使った粕汁も冷えた身体を温めてくれる。酒粕は日本酒の搾りかす。粕汁だけでなく甘酒、魚の粕漬けなど食材として広く使われている▼粕汁は全国的な料理だと思っていたが、関西が中心らしい。兵庫・灘や京都・伏見など古くからの酒産地が多いせいか。あるいは関西特有の使えるものは捨てずに使う“始末”精神の表れか▼酒粕は栄養価が高く、たんぱく質や炭水化物、ビタミンやミネラルなどの成分が多く含まれる。このため食用以外にも機能性に注目が集まっている。酒造会社などが研究に取り組み、美白効果や免疫力向上、高血圧やコレステロールに対する効果などが報告されている▼搾りかす、残りかすの活用は酒粕だけではない。豆腐製造時の大豆の搾りかすであるおからや、精米で生じる糠(ぬか)の機能研究も進んでいる。処分に苦慮されることも多い副産物の機能性を見いだせば付加価値が高まる。そのうち響きの悪い“かす”と呼ぶのが、はばかられるようになるかもしれない。
(2015/12/18 05:00)