[ その他 ]
(2016/1/8 05:00)
元素名のガリウムはガリア(フランスの古名)に、ゲルマニウムはゲルマニア(ドイツの古名)に由来する。高校の授業でそう説明した教師が「小川正孝先生が、発見した元素を『ニッポニウム』と名付けたと発表された。残念ながら間違いだった」と続けたことを鮮やかに思い出す▼淡々と、しかしわずかに眉をひそめる表情に悔しさがにじんでいた。明治末期の事件とはいえ旧帝大出身の化学教師にとって人ごとではなかったのだろう▼大みそか、理化学研究所が113番元素の命名権を得たという報に感慨を覚えた。1世紀ぶりに日本が科学史に名を刻む機会を得た。地上で合成可能な無名元素の残りは少ない。まさに滑り込みだった▼1980年代に世界トップに達したと自覚してからは忘れがちだが、日本の近代史は欧米列強に”追いつけ、追い越せ“の連続だった。ひとつでも肩を並べ、一人前だと認めてもらおうとした▼昨年の科学界では、ノーベル賞を逃した北里柴三郎の学統に連なる大村智先生が生理学医学賞に輝いた。探査機「あかつき」は、米国や旧ソ連に約半世紀遅れで金星軌道に達した。日本はもはや欧米に軽んじられていないとはいえ、まだ多くの挑戦が残されていると思う。
(2016/1/8 05:00)