(2025/1/6 05:00)
バイデン米大統領が3日、日本製鉄によるUSスチールの買収計画を禁止すると発表した。これを不服とする日鉄は米政府を相手取り、提訴する方針を固める事態に至っている。買収禁止には合理的な根拠などなく、むしろ米国経済にはマイナスに作用し、中国を利するだけだと憂慮する。同盟関係の日米に禍根を残し、日本企業の対米投資にも影響を与えかねない。バイデン氏の判断は容認できない。
日鉄の買収計画は、対米外国投資委員会(CFIUS)が審査していたが結論が出ず、2024年末にバイデン大統領に判断を一任していた。バイデン氏は安全保障を理由に買収禁止を決めたという。米国での将来的な減産を懸念したというのは形式的な理由に過ぎない。米大統領選以降、票田である全米鉄鋼労働組合(USW)に配慮してきたのは明らかで、日鉄はもとよりUSスチールも「政治的な判断」であると強く批判する。民間企業の買収計画が政争の具とされたのは極めて遺憾だ。
石破茂首相はバイデン氏に計画承認を求める書簡を送っていたが、看過されたことになる。
日鉄はUSスチールの雇用も生産も守り、買収後には取締役の過半を米国籍にするとも発表している。今後10年間、米政府の承認なしに生産能力も削減しないという。USスチール製の鋼材は多くが民生品ともされ、バイデン氏が指摘する安保上の明確な懸念は見当たらない。
買収禁止ならUSスチールは製鉄所閉鎖や本社移転が視野に入る。独占禁止法上、米国の同業との統合も難しい。米国の鉄鋼産業や米国経済の失速は、世界の粗鋼生産で過半を握る中国を利するだけと警戒したい。
日鉄は買収を諦めず、米政府を提訴する方針だが、20日にはバイデン氏より保護主義のトランプ氏が次期大統領に就く。ただトランプ氏はビジネス感覚で外交に臨み、国益を追求してきた経緯がある。買収禁止が中国を有利にし、米国のビジネス上の損失でもあることをトランプ氏に粘り強く説く必要がある。
*「新たな成長軌道②」は7日に掲載します。
(2025/1/6 05:00)
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