[ オピニオン ]
(2016/2/2 05:00)
新日鉄住金が日新製鋼の買収を決めた。先週末にはトヨタ自動車がダイハツ工業の完全子会社化を発表している。いずれも不採算企業の救済ではない大型の“攻めの再編”だ。こうした新たな挑戦が日本企業の競争力を高め、グローバルで勝ち抜く基盤となることを期待する。
ふたつの再編には、いくつかの共通した特徴がある。第一に、もともと資本関係を含む親密な間柄であること。トヨタの子会社であるダイハツと、新日鉄の出資を受ける日新鋼では確かに出資比率が違う。しかし買収や合併に対しては違和感が小さい。
第二に、同業界の上位と下位の企業の再編とはいえ、補完関係があること。ダイハツは軽自動車でトヨタにない事業基盤を持ち、日新鋼はステンレス鋼板など特殊鋼に強みがある。単に規模拡大を狙った再編でないことは、将来の競争力効果に結びつこう。
第三に、経営危機に陥った企業の救済ではないこともふたつの再編に共通している。トヨタや新日鉄住金が、堅調な業績を背景に次の戦略に打って出たといえる。
第四に、トヨタも新日鉄住金も業界内のナンバーワンだが、再編後にさらに地位を高めることが予想できる点だ。トップが強くなることで国内の競合他社は今後、規模を追う形の再編は難しくなるだろう。誤解を恐れずにいえば、他社は“一強多弱”を前提に自社の特色を出せるような戦略が必要になるのではないか。
日本の産業界は低成長時代に入って以来、多くの業界で「大手企業の数が多すぎる」といわれてきた。自動車も鉄鋼も、そうした業界のひとつだ。攻めの再編によって集約が進み、中核となった企業が世界で戦える力を高めていることは頼もしい。
電機業界のように、いまだに大手の業績不振の事業の整理に追われているケースもある。日本の産業界にはまだ、海外大手に比べて規模や経営資源で劣る国内大手が少なくない。景気回復でひと息ついても、そこに安住せずに将来に向けた戦略を練らなければグローバル競争に勝ち残れない。
(2016/2/2 05:00)
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