[ オピニオン ]
(2016/2/4 05:00)
文部科学省の科学研究費助成事業(科研費)に、私立大学の応募が増えている。従来は理工系やライフサイエンス系が強い研究型の国立大学が目立っていたが、人文社会科学系が強い私立大も経費縮減と研究力アピールの両面から目を向けはじめた。2018年度には科研費の改革が計画されており、これを機に多様化による日本の研究力向上を期待したい。
日本の科学技術研究の中核である科研費の採択をめぐる競争は近年、激化している。直近3年間の応募件数は平均で前年度比約4%増だった。応募の内訳は国立大5割、私立大3割、その他の研究機関が2割。運営費交付金の減額を補いたい国立大に加え、私立大の伸びが大きい。
例えば私立の早稲田大学は「医学部のない大学」で採択数トップ。この5年間の伸び率は4割と、理工系を含む主要大学中で最も高い。同大は数年前、各教員に自動的に配分する個人研究費を半減した。これが科研費急増の背景にあるという。国公私立とも定常的な予算は削られる傾向にあり、装置や試薬に経費がかかる理工系だけでなく「人文社会科学系の教員ものんびりしていられない」(文科省研究振興局)状況なのだ。
さらに同大の鎌田薫総長は「大学の研究の評価指標として、科研費採択(の実績)が問われるようになってきた」と話す。専門分野別のレビューで決まる科研費関連の数字は、研究力の客観的な目安になる。伸び率や分野別ランキングなどの形で、他大学との比較も容易だ。立命館大学や立教大学も最近、科研費採択実績を研究力のアピールに利用している。
文科省は18年度に向けて、科研費改革に動きだした。専門の大くくり化や審査手法の総合化、文理融合の推進を検討している。新規に科研費採択を目指す大学には、またとないチャンスだ。
新規参入増は採択率低下につながるため、先行してきた国立大の関係者には悩ましいだろう。国による支援は国立大重視になりがちだが、科研費なら実力勝負だ。これまで縁遠かった大学、研究者こそ、奮い立ってもらいたい。
(2016/2/4 05:00)
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