[ オピニオン ]
(2016/2/5 05:00)
2016年の春の労使交渉(春闘)は、連合が5日に予定する中央決起集会の「闘争開始宣言」で本格スタートする。連合は今春闘を「底上げ春闘」と位置づけ、「2%程度を基準」とする統一ベースアップ(ベア)要求を掲げるとともに、大企業労働者と中小企業や非正規の労働者との格差是正を初めて交渉の前面に押し出した。
労働側の賃上げ要求基準は、ベアと定期昇給(賃金カーブ維持)相当分2%程度と合わせ、昨年要求と同水準の4%程度となる。焦点はデフレ脱却に向け、物価上昇分を含んだ「実質賃金」が上がる目安となる3%台の賃上げを確保できるかどうかだ。
15年春闘で、連合傘下の労組は定昇とベアを合わせて平均2・20%の賃上げを確保した。しかし3%近く増えたのは自動車と機械金属産業だけ。300人未満の企業は1・90%にとどまり、大企業との格差はさらに広がった。また厚生労働省の調査によると、従業員30人未満の事業所の賃金上昇率は平均0・90%と、前年を0・2ポイント下回っている。
連合が昨年10月に中小企業2万社を対象に実施した調査では、原材料価格上昇の半面で「取引において価格・単価の引き下げ要請があった」とする回答が半数を超えた。業績好調な大企業がサプライチェーン全体で生み出した付加価値を取引先に適正に配分しなければ、中小の底上げは実現しない。
また経済の好循環には、もはや「基幹労働力」の一部となっている非正規労働者への目配りも欠かせない。多くの困難があるだろうが、正社員のベア確保だけで事足りるという考え方は通用しなくなりつつある。
労働組合が産業別に組織された欧米とは異なり、日本の労使関係は個々の企業と企業内組合が軸となる。バブル崩壊後の春闘は、ともすれば企業の生き残りと従業員のリストラを避けるための妥協の場に終わっていた。
今春闘は、経済再生と内需拡大に向けた大きな一歩だ。労使が前向きに賃上げに取り組むだけでなく、日本経済の底上げにつながる協議を期待する。
(2016/2/5 05:00)
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