[ オピニオン ]
(2016/2/25 05:00)
企業の農業参入で、農地保有があらためてテーマになっている。安倍晋三首相は国家戦略特区諮問会議で、農地保有の再検討や農業法人への企業出資比率拡大の検討を指示した。与党内でも協議が進んでいる。関係者の抵抗は依然として大きいが、企業の参入によって農業の競争力強化を図るためにも政府には決断が求められる。
企業の営農に関しては、2009年の農地法改正によってリース方式による参入が可能になった。農林水産省は「参入企業の数は5倍に増えた」と胸を張る。ただ実際の参入企業からは、別の声が聞こえてくる。
当然ながら、リース方式の場合に土地の所有権を持つのは農地を提供した農家のままだ。農家の都合で「貸した農地を返してくれ」と言われれば、それまで苦心して築きあげた事業基盤を一気に失う危機に直面する。
農地を借りても、それがすぐに使えるわけではない。場合によっては後継者難によって耕作が事実上、放棄された農地を企業が引き継ぐこともある。これを整地し、作物に適した“土づくり”や耕作を担当する人材の育成を重ねてようやく競争力を獲得する。
だから農業に参入した企業の多くは、初めの数年間は赤字経営になる例が多いという。栽培が軌道に乗り、これから投資を回収するという時に返還請求されたのでは、参入企業はたまらない。
そもそも、農家が企業の農地保有を渋る理由は「参入企業が途中で撤退すると土地が荒れる」「産業廃棄物置き場にされたら困る」というものだ。だが、こうした懸念は罰則規定や原状回復義務などの規制を設ければ解消できる。
またバブル期に宅地化や道路建設で農地を高く売った経験も、農家が土地を手放したがらない要因の一つだとみられる。しかし今や農地の価格は下落を続けている。時代は変わったということを認識する必要があろう。
農地保有や農業法人への過半出資が認められれば、参入企業は安心して事業拡大に専念できる。政府はこうした環境整備を思い切って進めてもらいたい。
(2016/2/25 05:00)
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