[ オピニオン ]
(2016/2/24 05:00)
日本経済の”足踏み“が長引く懸念が出てきた。主要シンクタンクは2015年度の実質国内総生産(GDP)成長率を0%台後半、16年度は1%前後、消費税率を10%に引き上げる17年度は0%台かマイナス成長と予想している。安倍晋三政権が目標とするGDP600兆円や財政健全化(基礎的財政収支の黒字化)を20年度に実現するには、平均2%以上の成長が必要だ。ハードルは極めて高いが、経済政策「アベノミクス」を進化させることで実現の糸口を見いだしたい。
日本経済を覆う停滞感は中国経済の減速や原油安、金融市場の混乱だけが原因ではない。GDPの約6割を占める個人消費に明確な回復シナリオを描けない影響が大きい。消費・投資の促進を狙った日銀のマイナス金利政策も、現時点でプラス効果は確認されていない。16年春闘での賃上げすら、前年の伸び率を下回るという民間予測が出ているほどだ。
確かに雇用情勢は改善し、15年12月の有効求人倍率は1・27倍になった。しかし非正規雇用が労働者の40%弱を占め、正社員化を望んでも実現しない層が20%弱もいる。大学新卒者の8%が非正規だ。非正規の待遇改善につながる賃金のあり方や正社員への転換促進、育児や介護の支援など、講じるべき施策は山積している。
アベノミクスは金融政策を重視し、円安・株高を導くことで大企業の業績を高めた。一方で成長戦略への取り組みは十分とはいえない。雇用情勢が改善した割には労働者全体の賃金底上げのペースが鈍く、個人消費の回復力は依然として弱い。この背景には、非正規雇用対策や多様な働き方の導入を怠ったことがあろう。
中小企業の間では、景気回復の実感がないまま日本経済が減速するという不安がつきまとう。政府は6月にも新成長戦略をまとめる。利下げだけでは中小企業の投資は出てこない。いかに新産業を生み出し、個人消費の拡大を実現するか。金融緩和による期待インフレの醸成という”マインド戦略“から実需の創出へ、骨太な施策への転換を急ぎたい。
(2016/2/24 05:00)
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