[ オピニオン ]

社説/STEM教育−革新を生む人材育成、欧米に遅れるな

(2016/3/7 05:00)

欧米を中心に、学校教育などでSTEM(ステム)人材の育成が大きなテーマとなっている。イノベーション(技術革新)を生む人材を育てる狙いがあり、米国ではオバマ大統領が教育改革の一環として提唱している。日本も、この動きに乗り遅れてはならない。

STEMとはサイエンス(科学)、テクノロジー(技術)、エンジニアリング(工学)、マスマティクス(数学)の頭文字からなる造語だ。理数系教育に近い内容だが、従来と違うのはモノのインターネット(IoT)やメーカーズムーブメント(製造業革命)を意識している点。3Dプリンターやデータサイエンスの活用など新たな技能が求められている。

日本では理科離れに対する警鐘に比べて、STEM教育の認知度は低い。一部で『レゴブロック』を使った体験型教育が始まっている程度であり、国を挙げて取り組む欧米との落差は大きい。

ただ最近になって、米アクセンチュアや米マイクロソフトなどの外資系企業が日本国内でSTEM教育の普及に乗り出している。アクセンチュアは横浜市の小学校で「プログラムを覚えて、ロボットを動かす」というロボット工作の授業を試行した。実践型の授業に子供らは目を輝かせ、6時間ずつ2日間にわたる授業で脱落者は一人も出なかったという。

注意すべきは、ロボット技術の習得がSTEM教育の本質ではないことだ。アクセンチュアの担当者は「授業の趣旨はプログラムを覚えることではない。失敗を繰り返すことで突破口が見つけられる。そのメッセージを伝えたかった」と、革新を生む人材に求められる素養を強調する。同社は横浜を皮切りに、こうした授業を他でも展開する計画だ。

子供向けのコンピューターのプログラムコンテストが、日本でもいくつか実施されている。その歴代優勝者の大半が米グーグルに就職していたという悩ましい現実もある。STEM教育を受けた人材を生み出すだけでなく、彼らが自由闊達(かったつ)に活躍するための土壌作りも必要だ。そうした面でも欧米に負けてはいられない。

(2016/3/7 05:00)

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