[ オピニオン ]
(2016/3/8 05:00)
年次有給休暇(有休)のあり方が問われ始めた。先週末の官民対話では、政府と経済界が有休取得を促進する方向性を共有した。世界的にも低位にあるわが国の有休取得率を向上し、仕事と生活の両立を目指したい。
労働基準法では継続勤務年数が6・5年以上の労働者に対し年間20日の有休を与えるとしている。これは労働者の権利だが、問題は権利が行使されていない点だ。
厚生労働省の調査によれば、2014年に企業が付与した有休日数は労働者1人当たり平均18・4日。これに対して取得日数は同8・8日で、取得率は47・6%にとどまる。企業規模別でみると従業員1000人以上の大企業でも取得日数が同10・1日、取得率は52・2%。これが中小企業になるとさらに悪化し、100人未満の企業の取得率は43・2%にすぎない。中小企業では最近の人手不足もあいまって、有休取得がままならない状況にある。
かつて海外から”働き蜂“と揶揄(やゆ)されたわが国だが、有休取得率を見る限り状況は改善していない。旅行会社の調査によれば、15年の有休取得率でも日本は主要26カ国中25位だ。経済先進国でありながら、労働環境は依然として後進国と言わざるを得ない。
政府は20年までに、有休取得率を70%に引き上げる目標を掲げている。このため企業に対し、従業員に年間5日分の有休取得を義務づける労働基準法改正に動いている。昨年の通常国会で継続審議となった法改正の再チャレンジだ。企業側も経団連の榊原定征会長が官民対話の中で、有休取得を年3日程度増やすよう会員企業に呼びかける考えを明らかにした。官民の方向性は共有された。あとは有休取得を実行しやすい環境づくりを急ぐ必要がある。
企業の生産性向上は、収益性だけでなく従業員の有休取得率を高める原動力になろう。情報通信技術(ICT)活用などで生産性を向上すれば、人手不足に苦しむ中小企業でも有休消化の改善の余地を見いだせるだろう。いかに仕事と生活を調和させるか。政労使で知恵を絞りたい。
(2016/3/8 05:00)
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