[ オピニオン ]
(2016/3/25 05:00)
原油価格下落に伴う”逆オイルショック“が、リサイクル業界を直撃している。樹脂や燃料など石油から作る新品の価格が下がったことで、対抗する再生品は赤字販売を強いられ、苦境に陥る。関連業界と行政は、貴重なリサイクル網を守る手だてを考えるべきだ。
影響が出ているのが廃油リサイクル業界。自動車整備工場から使用済みのエンジンオイルを回収して処理し、再生オイルにするシステムがある。国内で年80万―90万キロリットル発生する潤滑油の廃油は、ほぼ半分が再生される。再生オイルは2014年まで重油より安く、ボイラなどの燃料として重宝されてきた。だが重油が値下がりした今、事業者は再生オイルをコスト割れで売らざるを得ない。
他にも燃料油や溶剤などから出る廃油もある。ただ42社が加盟する全国オイルリサイクル協同組合によれば、会員各社の主力事業は潤滑油の再生だ。その中には廃業に追い込まれてもおかしくない事業者が少なくないという。
もし、このまま再生システムが崩壊すれば、自動車整備工場は使用済みエンジンオイル処分のための新たな費用を負担せざるを得なくなる。再生事業者はこうした点を訴え、整備工場から廃油を引き取る価格の引き下げを求めている。ただ、なかなか理解を得られないのが現状のようだ。
プラスチックにも逆風が吹く。容器包装リサイクル法による廃PETボトルの落札単価を見ると、14年度は1トン当たり6万円近くしたものが、15年度は2万―3万円台に下落した。他の廃プラも低下傾向だ。家電や事務用品、包装材などは廃プラ利用の優等生だが、価格が安くなれば調達が容易な新品への切り替えが進んでしまう恐れがある。
再生システムが機能していれば、原油価格が高騰したり資源不足が起きたりしても再生品を安定供給できる。貿易の面では資源国からの輸入依存度を下げるための切り札だ。事業者の撤退・廃業が相次いで問題が深刻化する前に、行政と関連業界は、リサイクル網を維持するための方策を探ってもらいたい。
(2016/3/25 05:00)