[ オピニオン ]
(2016/3/29 05:00)
「MICE」という言葉が、着実に広まっている。Meeting(会合)、Incentive(招待旅行)、Conference(国際会議)、Exhibition(展示会)の頭文字をとったものだ。わが国でも観光庁が各種政策を打ち出し、地方自治体でも地域を挙げた取り組みが始まっている。しかしこの分野の国際競争は激しい。まず自治体が専門部署を立ち上げて人材を育て、それを国が包括的に支援する仕組みが求められる。
外国人の訪日観光客が急増し、地方経済にもプラスになっている。MICEはそれ以上に波及効果が大きい。訪日観光客の増加で満足するのではなく、その次の一手を模索する時期に来ているのではないか。
一般的な観光とMICEは誘致方法がまったく異なる。目的はビジネスと人的交流にあり、来訪者の観光の要素は副次的だ。誘致には丹念な市場調査と戦略性が必要。もちろん受け皿となる施設の整備も欠かせない。自治体の理解は進んでいるが、横浜市の「観光MICE推進部」のような専門部署を持つケースは、まだ少ない。
ただ残念ながら、MICEについての日本の国際的地位は低下しているという声が強い。”MICE先進国“とされる豪州はもちろん、アジア諸国の中でもシンガポールやマレーシア、韓国が存在感を強めている。これら各国に共通するのは誘致を国家戦略として位置づけ、空港整備はじめ相応の施策と予算をかけていることだ。
今年、日本では5月の伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)に連動した閣僚級会合が、4月10日の広島市の外相会合を皮切りに10都市で予定されている。自治体が手本を学ぶいい機会になろう。
また2020年の東京オリンピックでは、わが国を代表する展示会場である東京ビッグサイトが使用できなくなることになった。この期間中の大規模展示会を、東京以外に誘致するチャンスだ。
主要都市が連携することで情報を共有・補完しあうとともに、政府が地方のMICE誘致を後押しすることを期待する。
(2016/3/29 05:00)