[ オピニオン ]
(2016/4/5 05:00)
スズキがインド子会社で生産した小型車「バレーノ」を日本国内で発売し、話題になっている。インドからの輸入品は繊維などの軽工業品や食品のイメージが強く、高付加価値の工業製品が消費者に受け入れられるかどうかは未知数だ。スズキの挑戦は、日本の消費者のグローバル意識を問う試金石といえるのではないか。
日本の自動車各社はアジア各国に生産拠点を広げた。しかし、そこで生産した車にとって母国の日本市場は鬼門だった。日産自動車や三菱自動車がタイ生産車を逆輸入したものの、販売は苦戦した。
日本勢のアジア工場ばかりではない。世界大手の一角、韓国の現代自動車も、普通車や小型車では日本市場に入り込めていないのが実情だ。
国産車に十分な性能と価格競争力があるからだという説明には、納得いかない部分がある。いまや国産車でもアジア製部品を使うのが当たり前。完成車だけが品質に劣ると考えるのはおかしい。また欧州車は高価でも、日本市場の一角で確固たる地位を占めている。
消費者にはインド生産車に抵抗感があるのではないかという疑問に対し、スズキの鈴木修会長は「何か先入観があるんじゃないでしょうか」と、やんわり批判。「そんな先入観を持っているとグローバル化の波に乗り遅れる」と切り返した。
この意見は傾聴に値する。環太平洋連携協定(TPP)の議論も同じだが、貿易の発展は相互の市場開放が前提だ。特定分野が不明確な理由で国内市場を独占していたら、いつか疎外される。まして日本企業が海外で生産した製品が国内で受け入れられないのは、決してほめられたことではない。
10年ほど前にスズキのインド工場を取材した時、現地従業員が「量も質も日本のスズキを超えたい」と目を輝かせていたことを思い出す。その3年後、インド工場は量でスズキの国内生産台数を上回った。次は質に挑むのが当然だろう。日本の消費者が、公平かつ厳しい目で評価することを望みたい。
(2016/4/5 05:00)
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