[ オピニオン ]
(2016/4/8 05:00)
宇宙ビジネスの拡大を目指す法整備が進んでいる。国が全面的に責任を負ってきた従来の制度を改め、民間の参入や利用をしやすくするのが狙いであり、産業界も歓迎しよう。ただ現状では官需以外の宇宙事業は、通信・放送衛星など限られた分野しかない。官から民への事業移管などを含めて、民間事業者を育てる取り組みにも力を入れてもらいたい。
政府は2015年1月に決定した宇宙基本計画に、官民合わせた関連産業の規模として10年間で延べ5兆円を目指すことを盛り込んだ。12月には工程表を改訂し、より具体的な法改正などに取り組んでいる。
この一環として、今年3月に「人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(宇宙活動法)」と「衛星リモートセンシング記録の適正な取り扱いの確保に関する法律」の両法案を通常国会に提出した。成立すれば18年にも施行する。
従来のロケットは宇宙航空研究開発機構(JAXA)法に基づいて独占的に打ち上げてきたが、宇宙活動法案では他の事業者も事前審査や許可制で参入可能となる。打ち上げに伴う地上の第三者損害についても賠償規定を設ける。また衛星による地表観測記録の利用時に、テロリストらの悪用を防止するルールを規定する。いずれも民間利用の拡大に欠かせない制度だ。
宇宙先進国である米国は、1980年代から民間参入に向けた法整備を進めてきた。実業家のイーロン・マスク氏が創業したスペースXも、この制度に基づいて参入した。
同社は画期的な再利用方式のファルコン・ロケットの開発を進めている。成功すれば打ち上げコストを劇的に引き下げ、競合国の脅威となる。米航空宇宙局(NASA)は同社を技術的に支援している。
日本でも既存の宇宙ビジネス拡大に加え、こうしたベンチャーの参入が求められる。宇宙事業には巨額の初期投資が必要であり、公的な後押しが必要となろう。政府は事業環境整備にとどまらず、宇宙産業の発展に向けた積極策をお願いしたい。
(2016/4/8 05:00)