[ オピニオン ]
(2016/4/7 05:00)
政府の経済財政諮問会議が、商品券などを活用した消費喚起策の検討に着手した。ただ過去の類似施策は需要の先食いを招き、関連業界は苦い経験をした。より長期的な視点で、消費のミスマッチを解消する施策を議論すべきではないか。
諮問会議では子育て関連に使えるクーポン券や、額面を上回るプレミアムがつく商品券を政府が発行する案が俎上(そじょう)に上っているという。また、これと連動する形で小売業の一斉セールも議論している。米国ではブラックフライデー(11月第4木曜日の感謝祭の翌日)から小売業がクリスマス商戦に入る。この日本版を実施し、相乗効果を狙う作戦だ。
一斉セールが実現すれば新たな試みとして注目される。ただ商品券方式での消費喚起には疑問がある。家電エコポイントやエコカー補助金では急激に需要が増えたが、その後の反動減が小売業やメーカーに打撃を与えた。需要の先食いにとどまり、ならしてみると、あまり効果がなかったという声が多い。
政府は「モノ」一辺倒ではなく、子育て関連や旅行関連などの「コト」消費に使える商品券を検討している。これにより、ある程度は反動減を起こさない配慮をしているようだ。
しかし消費喚起のためには、なぜ消費者が“財布のひも”を緩めなくなっているのかを真剣に考える必要がある。セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長は「もはや消費者は持つべきモノを持っており、新しいモノや価値あるモノしか買わなくなっている」と再三にわたり話している。
押し入れには未使用品があふれ、ネットを通じて評判や価格の情報を入手できる消費者は、かつてと比較にならないほど商品価値を厳しく吟味する。政府が商品券を配れば一時的に消費は増えるだろうが、それ以上に重要なのは将来を見据えた消費喚起の方策だ。消費者のニーズと供給のミスマッチがなぜ起きているのか。そのギャップを埋めるために何をすべきか。政府主導で製・販で考える枠組みを作ることも可能ではないか。
(2016/4/7 05:00)
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