[ オピニオン ]
(2016/5/18 05:00)
17日に閣議決定した2015年度版エネルギー白書は、14年以降の急速な原油安局面を受けたエネルギー安全保障のあり方を重点的に分析している。将来の価格上昇リスクを想定した準備は日本にとって必要だ。同時に原子力発電への投資も怠ってはならない。
白書では、原油安の結果として世界の石油・ガス開発投資が14、15年と連続して減少する事態を指摘。これは1980年代以降、初めてという。開発投資の減少は将来の生産量にマイナスに作用し、もしエネルギー需要が回復すれば再び価格の急騰を招きかねない。
日本企業の開発投資は、大手商社のエネルギー部門が大幅な赤字を計上したこともあり、世界平均を上回る割合で減少しているという。また投資規模そのものも海外石油大手より劣る。日本主導で獲得・輸入した石油・ガスの自主開発比率は14年に過去最高の24・7%となったが、これを安定的に政府目標の40%以上に伸ばしていくのは容易ではない。
つまり将来、世界のエネルギー需給の逼迫(ひっぱく)が日本経済に深刻なダメージを及ぼす状況は変わっていない。日本としてはエネルギー供給源の多様化を図る一方、新興国に省エネ技術を移転することで需給を緩和する努力を続ける必要がある。
多様化の選択肢の一つとして原発が期待される。化石燃料に依存せず、また国内で長期の燃料保存が可能な原発はエネルギー安全保障の面からは切り札的な存在だ。白書では長期的な原発依存度の低減と、国民の信頼回復に努める点を強調しているが、いずれ既存原発の再稼働だけでなく新増設の必要性を議論することになろう。原発周辺地域の安全確保と、新たな技術開発の両面で積極的な投資を欠くべきではない。
再生可能エネルギーの拡大にも大いに期待するが、まだ技術的なめどは立っていない。エネルギー源多様化と徹底した省エネ、スマートコミュニティー(次世代社会インフラ)などの諸施策を総動員することが、日本のエネルギー政策の骨格だ。
(2016/5/18 05:00)
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