[ オピニオン ]
(2016/5/17 05:00)
個人消費に変調の兆しが見え始めている。百貨店やスーパーの売上高は円安・株高・訪日外国人の消費で増加傾向が続いていたが、円高・株安・原油安のトリプルリスクにさらされている。それに加えて、単なる節約志向ではない新たな消費傾向が台頭している。”消費変調“への備えが必要になってきた。
日本百貨店協会によると、2016年3月の全国百貨店売上高は2か月ぶりのマイナス。4月の大手百貨店5社の売上高速報も4社がマイナスとなった。主力の衣料品が低迷し、これまで”爆買い“で注目された訪日外国人消費も勢いが衰えて”普通買い“になりつつある。
日本チェーンストア協会がまとめた全国のスーパーマーケットの3月売上高も4カ月ぶりにマイナス。コンビニエンスストアも3月に1年ぶりにマイナスを記録した。各業界とも天候不順を不調の理由に挙げるが、果たしてそれだけだろうか。
百貨店協会の井出陽一郎前専務理事は「消費者の生活防衛意識が高まっている」と指摘する。最近の円高・株安で日本経済の先行きが見通しにくくなった一方、世界的な原油安が資源国経済の不振を招いていることが消費者心理にまでカゲを落とし、財布のひもを締める方向に作用している。
だからといって、消費者が求めているのは単純な値引きではなさそうだ。過去のデフレ局面では、ネット通販を含めて低価格競争が激化し、そのあおりを受けた家電メーカーや量販店が業績不振に陥った。
ケーズホールディングスの遠藤裕之社長は「今は安いから買うということはあまりなくなった。価値ある商品に支出するようになっている」と指摘する。高機能の生活家電、高画質な4Kテレビなど付加価値のある商品は高価でも売れる。同社は17年3月期の値引き販売を抑制する方針という。
商品の価値を見極めようとする消費者が増えると、メーカーも流通業界も商品開発・販売方法の抜本的な見直しを迫られる。価値志向の高まりを見据えた戦略が必要だ。
(2016/5/17 05:00)
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