[ オピニオン ]
(2016/6/11 05:00)
一時は「わが国の国益とは何か」と騒がれた環太平洋連携協定(TPP)。本来なら成長戦略の柱として脚光を浴びていたはずだが、いまやその発効が暗礁に乗り上げている。
紆余曲折(うよきょくせつ)の後、昨年10月に大筋合意にこぎ着け、今年2月には参加12カ国が署名。あとは発効に向けて各国の議会承認という国内手続きを残すのみだ。だが、ここで思わぬ事態に見舞われた。
安倍晋三首相は「国家100年の計で、中小企業や地方に大きなビジネスチャンスをもたらす」と強調。3月に関連法案を国会に提出し、4月に衆院で審議入りした。しかし熊本地震などの影響で審議はストップ。通常国会での承認は見送られ、継続審議となってしまった。
TPPをリードしてきた米国では、オバマ大統領が「年内に議会承認を得たい」と意気込んだ。だが次期大統領候補のクリントン、トランプ両氏がいずれも反対を表明。特にトランプ氏は「外国企業ばかりが得をする不利な協定」と決めつけ「日本からの輸入車にかける関税を大幅に引き上げる」と豪語する。
このままでは発効は不可能。米国の先行きが不透明な中で、7月の参院選では野党がTPP反対を公約に掲げる。指をくわえて見ているだけで良いのだろうか。
(2016/6/11 05:00)