[ 自動車・輸送機 ]

富士重工業、汎用エンジン撤退−来年めど 車・航空機に集中

(2016/6/20 05:00)

  • 富士重工業の汎用エンジン「EXシリーズ」

 富士重工業は2017年をめどに汎用エンジンを製造する産業機器事業から撤退する。従業員は自動車事業の開発部門などに配置転換する。産機事業は自動車、航空機とともに富士重3事業の一角を占めていたが、近年は競争激化で低収益が続いていた。今後は売上高の9割を占める車事業に重点的に経営資源を投じ、開発力を高める。非中核事業から撤退する構造改革が完了し、富士重の経営は車と航空機に集中する新ステージに入る。

産機事業では建設機械などに搭載する汎用エンジンや発電機を生産し、14年度は約91万台を販売した。ただ近年は新興国メーカーなどとの価格競争が激化し、15年度の売上高は326億円、営業利益は1億円にとどまっていた。

産機事業の従業員は国内外で約680人。汎用エンジンを生産する埼玉製作所(埼玉県北本市)の従業員は車の開発拠点である東京事業所(東京都三鷹市)と生産拠点である群馬製作所(群馬県太田市)に配置転換する。営業担当らも車部門に振り向ける予定。富士重は5月に産機事業を16年10月1日付で車事業に統合し、新規開発をやめる方針を打ち出していた。

一方で、主力の車事業は好調だ。16年度の世界販売は約105万台と初の100万台超えを達成し、20年度には120万台超に拡大する見通し。車が好調なタイミングで産機事業から撤退し、車事業に経営資源を集中させてスバルブランドに磨きをかける。

同社は12年に風力発電事業を、13年にゴミ収集車事業を売却した。非中核事業から撤退して、選択と集中を進めていた。

■産業機器から撤退−「スバルブランド」磨く、開発力高め世界で勝負

富士重工業が産業機器事業からの撤退を決めた。背景には主力の自動車事業で電動化や自動運転などを巡って激化する技術開発競争に遅れを取ってはならないという危機感がある。低収益ながら営業黒字を確保していた産業機器事業を手放す今回の経営判断は、スバルが世界ブランドとして成長するための大きな転換点になる。(下氏香菜子)

「スバルを磨く取り組みを加速させるため車事業が好調な今こそ(撤退を)するべきだと判断した」。同社首脳は産機から撤退し、車に経営資源を集中させる狙いをこう述べた。

富士重は2002年にバス車体、鉄道車両の生産から撤退したのを皮切りに、ここ数年で非中核事業から相次いで撤退。13年にサイバーダインにロボット事業を譲渡したのを最後に車、航空機、産機の3事業体制が続いていた。今回の産機撤退は富士重の選択と集中の最終章となる。

産機撤退に踏み切る背景にはスバルブランドを磨くために、車の開発力を一段と強化する必要に迫られていることがある。一つは電動化への対応だ。米カリフォルニア州の「ゼロ・エミッション・ビークル(ZEV)規制」をはじめ各国が環境規制を強化。「電動化への対応は避けられない」(同社首脳)。18年にプラグインハイブリッド車(PHV)を、21年には電気自動車(EV)の市場投入を決めている。

水平対向エンジンに代表される従来の「スバル車」の魅力に加え、安全運転支援システム「アイサイト」のような新しい車の価値を創造していくことにも要因がある。いわゆるスバル車のコアなファンである“スバリスト”の期待に応えるとともにユーザーの裾野を広げていくことがグローバルブランドへの脱皮に欠かせない。

これらを実現するために最も重要なのは開発の人材だ。産機には汎用エンジン開発に携わる優秀な人材が多くいる。もちろん、新規採用や中途採用など人材採用は積極化しているが、社内にいるのであれば活躍してもらわない手はない。

同社幹部らは6月上旬産機事業の生産拠点である埼玉製作所(埼玉県北本市)を訪問し、従業員の前で産機撤退の理由を説明したという。「寂しい気持ちはあると思う。でもよかったと思える日が必ず来る」(同)。富士重は車と航空機の両輪で、グループ一丸となり新しい時代に挑戦する。

(2016/6/20 05:00)

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