[ オピニオン ]
(2016/6/20 05:00)
「潔い決断」「これで責任をとったことになるのか」―。自動車の燃費不正問題でスズキの鈴木修会長が兼務していたCEO(最高経営責任者)を返上した。業界の重鎮でもある鈴木さんの判断は賛否両論を呼ぶ。
自動車業界には「カタログ燃費と実燃費は乖離(かいり)している」という冷めた目がある。三菱自動車もスズキも、そうした雰囲気の中でコンプライアンスが緩んだのだろう。
もちろんルールがある以上、違反は許されない。ただルールには大概、抜け道がある。あるメーカーのテスト走行では、高度な運転テクニックを持つドライバーがはだしで運転するという。そうするとエンジンの負荷を肌で感じ、燃費を抑えられる。
靴をはかなくても、あるいは運転技術で燃費を抑制しても「不正」にはならない。会見での鈴木さんの「(データに改ざんはなく)お客に迷惑はかけない」という発言は開き直りと批判されたが、現場の実態を知った上で漏れた本音ではなかったか。
日本メーカーの一連の燃費問題は、独フォルクスワーゲンの排ガス不正とは同列に論じられないはず。ただ「不正」に対する消費者の目は厳しい。それが信用の重みであり、看板を守るトップの責任の重さだとかみしめたい。
(2016/6/20 05:00)