[ オピニオン ]
(2016/6/24 05:00)
冷蔵庫、車、ポンプ、プーリー、ベアリング―。検索サイトと連動したリスティング広告で、パソコン画面の一角が埋まっている。よくある光景だろう。
家電製品はともかく、記者の仕事で関わる業務用機器は私生活とは無関係であり、潜在顧客にはならない。プロ向けの通販サイトの広告がずらりと並ぶと「すみません。お客じゃないんです」と、つい呟きそうになってしまう。
ブランドの認知度を高める目的の一般向け広告とは違い、検索ワードや購買履歴を活用したデータ解析型の広告は顧客の潜在ニーズに迫る技術だ。とはいえ「知りたい=買いたい」とも限らないのが問題点。
経営戦略論を専門とする関西大学教授の上野恭裕さんは「工具商社の仕事の多くはネット通販で代替可能だが、すべてを代替するのは不可能」と話す。相手の声や表情から興味の有無を判断して瞬時に別の提案を繰り出す芸当は、ITにはまだできない。
カメラを通じて、人工知能がパソコンやスマートフォンの前の人の表情を読み取る技術も開発が進んでいる。いずれソーシャル・メディアへの書き込みや「いいね」を押す時、こちらの本心がネットの向こうに伝わるようになったら、表情を練習する必要があるかも。
(2016/6/24 05:00)