[ オピニオン ]
(2016/6/28 05:00)
九州・山口で、がんの早期発見や薬効診断の新技術が相次いで花開こうとしている。九州大学は少量の尿や血液からがん細胞を検出できる技術を開発。また山口大学と東洋鋼鈑は抗がん剤の薬効を判断する体外診断薬を開発した。いずれも2016年内の製品化を目指している。こうした新技術が地方から相次いで生まれたことは、人類の宿敵ともいうべきがんの撲滅に向けた一歩と言えるだろう。
九州大学高等研究院の新海征治特別主幹教授らのグループは、尿や血液からがん細胞を検出する蛍光センサーを開発した。がん細胞が発現すると生体内のヒアルロン酸などの多糖物質が尿や血液に漏れ出すことは広く知られている。
従来、この多糖物質を捕捉・検出するには蛍光性物質を人為的に加える必要があり、洗浄や選別処理も医療現場の負担になっていた。同大は多糖物質と結合すると発光する独自のセンサーを開発。早期発見や治療がしやすくなるという。
山口大学と東洋鋼鈑が開発した抗がん剤の薬効を判断する体外診断薬は、患者の血液から取り出したDNAを専用のチップと反応させる仕組み。患者の体質や年齢に合った治療薬を選定でき、副作用を事前に予測することも可能となる。欧米で先行する個別化医療が日本でも進むことが期待される。
このほかにも九州大は安川電機などと共同で抗がん剤の調製向け双腕ロボットを開発し、患者への投与を始めている。また山口大はロボットを使った細胞培養の実証実験を始めるなど、両校とも先端医療への取り組みに熱心だ。
日進月歩のがん治療は複雑・専門化し、新知識の習得と作業量の両面で医療スタッフの負担になっている。最も効果があるのは早期発見であり、初期段階で適切な治療を施すことだ。
そのためには検査や治療薬選定のスピードを上げる効率化や省人化が望ましい。また治療する側、される側の双方が安心できる環境を整えることも、がん克服の一助になる。多面的な取り組みが必要だ。
(2016/6/28 05:00)
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