[ オピニオン ]
(2016/6/30 05:00)
7月1日から7日までは、毎年恒例の全国安全週間だ。労働災害は長期的には減少傾向にある。ただ高齢者や第3次産業の従事者の死傷者増加など新たな課題が浮上していることを、きちんと認識したい。
厚生労働省のまとめによると、2015年の労働災害による死亡者の数は972人と、初めて1000人を下回った。死傷者数は11万6311人で前年より減少したものの、過去最少だった09年の10万5718人を上回っている。
近年の労働災害にはいくつかの特徴がある。第一に、年齢別の死傷者数で60歳以上が23・3%とトップを占めている。これは定年延長や再雇用による高齢者の就業延長と、若手労働者の減少の両面が影響していると考えられる。
第二に、製造業や建設業の死傷者が減少する一方、第3次産業の割合が着実に増えている。それも社会福祉施設で介護作業中に腰を痛めるなど、新たな形の労働災害が目立つという。中央労働災害防止協会などは15年から転倒事故防止の取り組みを強めているが、これも小売業や飲食店などでの事故の抑制を目指すものだ。
第三に、団塊世代の大量退職によって安全衛生ノウハウの伝承が途切れたり、非正規労働者の増加が労働災害対策の不徹底につながったりする傾向が指摘される。近年の景気回復で人手不足が顕在化し、業務経験の不足した労働者が現場に増えたことも、安全管理の面からは見過ごすことができない。
人口減少が始まった日本では、今後も高齢者の就業拡大や育児期間を終えた女性の職場復帰などによって労働人口の不足を補う必要がある。必ずしも熟練工ばかりを確保できない職場や、第3次産業の最前線で労働災害を防ぐための工夫が必要となろう。また製造業では、依然として企業規模が小さいほど従業者数あたりの事故率が高いことも問題だ。
安心・安全を確立するための努力に終わりはない。直接の担当者のみならず、産業界全体で対策を急ぎたい。
(2016/6/30 05:00)
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