[ ICT ]
(2016/6/30 05:00)
(ブルームバーグ)先週退任したソフトバンクグループのニケシュ・ アローラ前副社長の在任時の行為をめぐり、米証券当局が同社を調べていると、事情に詳しい関係者が明らかにした。
同関係者らによれば、米証券取引委員会(SEC)のロサンゼルス事務所の担当者らは、アローラ氏の利益相反や他の疑わしい行為がなかったかどうか、さらにソフトバンクの投資家向け情報開示の状況などを調べている。同案件が公にされていないことを理由に匿名で語った。通常、着手段階のSECの調べは予備的なものであり、ソフトバンクあるいはアローラ氏が法的処分を受けることを必ずしも意味しない。ソフトバンクおよび同氏には不適切な行為の疑いはかけられていない。
ソフトバンクの投資家グループがアローラ氏(48)の適性や報酬、プライベートエクイティ(PE、未公開株)投資会社アドバイザーを務めていた経歴による利益相反の可能性などをめぐって、ソフトバンクの取締役会に内部調査を行うよう求めた申し立てに対し、同社は20日、特別調査委員会による調査の結果、同グループの主張は評価に値しない内容だとの結論に達したと発表していた。アローラ氏は22日付で退任した。ソフトバンクは退任について、投資家の批判とは無関係だとしていた。
この報道を受けて堅調に推移していたソフトバンク株は急落、一時、前日比3%安の5632円まで下げた。終値は同0.3%安の5789円。
エース経済研究所の 安田秀樹アナリストは「ニュースを見て株を売った人がいたので株価は下がったが、嫌疑が掛かっているのはアローラ氏であるため、長期的なソフトバンクの価値は損なわれない」と話した。
SECスポークスマンのジュディ・ バーンズ氏はコメントを控えた。アローラ氏は質問はソフトバンクにしてほしいとしている。
ソフトバンクは問い合わせに対して文書で、「規制当局の動きに関する報道についてコメントすることはない」とした上で、「取締役会の独立役員で構成する特別調査委が法律関係者の協力を得て投資家らが提起した前副社長の行為に関する申し立ての内容を調査した結果、評価するに値しないとの結論に達した点を指摘しておきたい」と回答した。
アローラ氏は先週の インタビューで、 孫正義社長が以前2人の間で話し合っていた来年の社長職禅譲をしない旨を伝えてきたため、退任を決断したことを明らかにした。
この投資家グループは1月20日付の11ページに上る書簡でアローラ氏に関して懸念を表明。利益相反の有無のほか、同氏の投資パフォーマンスと1億ドル以上の報酬、「疑わしい商取引」などを批判した。これとは別に、ソフトバンク傘下の米スプリントの取締役会に宛てた投資家1人からの書簡も、同様な理由でアローラ氏の取締役解任を求めていた。
4月に書簡の内容が報道された際、ソフトバンクと孫社長はアローラ氏を擁護、不適切なことは何もしていないと否定していた。アローラ氏も当時、「私の実績が物語っていると思う。ソフトバンクでの18カ月間、私は常に会社を優先するよう努力してきた。これらの書簡コメントで事実に基づいているものは何一つないと考える」と述べていた。
投資家グループがソフトバンク取締役会に内部調査を求めた書簡は、米法律事務所ボーイズ・シラー・アンド・フレクスナーが送付した。その後、同事務所は利害関係を理由に代理人業務から退き、投資家グループは代わりにニューヨークで検察やSECの勤務経験がある弁護士のアイラ・リー・ ソーキン氏を起用していた。
ソーキン氏は投資家グループの申し立てを見直していると説明。アローラ氏の退任が投資家の行動にどのように影響するか判断を下すのは時期尚早だと述べた。
原題: SoftBank Said to Face U.S. Inquiry Over Alleged Arora Conflicts(抜粋)
(2016/6/30 05:00)