[ オピニオン ]
(2016/7/5 05:00)
三菱自動車が軽自動車ビジネスを再開した。同社は燃費データの不正が4月に発覚してから生産・販売を停止していた。問題の車を生産していた水島製作所(岡山県倉敷市)周辺の部品メーカーや全国の販売店からは、ひとまず安堵(あんど)の声が聞こえる。だが信頼回復への道は険しく、三菱自にとってはこれからが正念場となる。
三菱自は不正が発覚した軽自動車の燃費データを取り直し、国土交通省に届け直して再開にこぎ着けた。だが購入者が車を選ぶ際に重要な要素となる燃費は、競合メーカーに比べて見劣りすることになる。燃費競争が激しい軽市場で、しかも一度は不正のイメージがついてしまっただけに、販売は苦戦を強いられるだろう。
同社は不正対象車のユーザーに対して、補償金として一律10万円を支払うことにしている。今後の販売でも、相応の値引きを求められることは避けられない。無償点検キャンペーンなどの付帯サービスで顧客のつなぎとめを図ろうとしているが、いずれにせよ業績面への影響が懸念される。
だが主力の軽自動車ビジネスを停止したままでは、立ちゆかないことは明らかだ。水島製作所では2カ月あまりの停止期間中、1300人の従業員が一時帰休となっている。同社に納入する部品のメーカーの経営や雇用にも影響が及んでいる。自己破産の手続きに入った部品加工メーカーも伝えられる。三菱自は生産・販売停止に伴う損失を補償する方針だが、地域経済への打撃は小さくない。
三菱自は10年前にもリコール隠しが発覚し、社会問題化した経験を持つ。度重なる不祥事に対し、社会からこれまでにない厳しい視線が注がれている。ビジネスを再開したといっても、同社にとっても、また部品メーカーや販売店にとっても前途はいばらの道だろう。
今後、三菱自は資本提携先である日産自動車から支援を受けて再発防止策を徹底するという。自社のあしき風土を一新するとともに社会的責任を肝に銘じ、立ち直ってもらいたい。
(2016/7/5 05:00)
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