[ オピニオン ]
(2016/7/29 05:00)
英語に「NIMBY(ニンビー)」という造語がある。「not in my back yard」―つまり「私の裏庭はダメ」の頭文字。いわゆる迷惑施設に対する住民の拒否感を指す。
東京電力福島第一原子力発電所事故で放出された放射性物質は、福島県内にとどまらず、気流に乗って広範囲に降り注いだ。宮城、茨城、栃木、群馬、千葉の5県には、1キログラム当たり8000ベクレルを超す放射線量の指定廃棄物が多量にある。
国は安全性を確認しつつ、各県に1カ所ずつ処分場を設置して集約管理する方針だが、まさに“ニンビー状態”。候補地とされた市町村では反対運動が起こり、現地調査すらできない状態が続く。
先ごろ千葉市は保管する廃棄物8トン弱の指定解除を申し出て環境省に認められた。放射線量が基準以下に自然減衰したためで、一般廃棄物としての処分が可能になる。だが同市は当面、そのまま保管する方針。
千葉県の処分場候補地は千葉市内の東電の施設内。市は近隣住民の理解が得られないとして拒否している。そうした中での指定解除申請には「処分場を市外にしてほしい」という主張が透けて見える。それが住民の意思か、それともエゴか。ニンビーは悩ましい問題だ。
(2016/7/29 05:00)