[ オピニオン ]
(2016/7/28 05:00)
休日のJR小倉駅を通りかかると、大通りが封鎖されていた。道行く人が日の丸の小旗を持っている。大がかりなイベントでもあるのかと、首をかしげた。
人気TVドラマシリーズ『相棒』の劇場版のロケーションだったと後で知った。半日に渡って県道約300メートルを使い、市民ら3000人がエキストラとして参加。スポーツ選手団の凱旋(がいせん)パレードをテロから防ぐシーンを撮影したとか。
北九州市は1989年、日本で初めてロケ誘致事業を立ち上げた。都市と農村、明治以来の洋風建築や工場群という多彩な“舞台装置”が点在し、多くのクリエイターを惹きつける。この事業はフィルムコミッションにつながり、映画だけでも85作品のロケ地になった。
市内の企業も積極的に協力している。数年前、百貨店の井筒屋で大規模な爆発事故が起きたという風聞でやじ馬が群がったが、実はドラマの撮影だったという笑えない話も経験した。
今ではロケの誘致に取り組む組織は全国に120団体もあるという。テロや爆発シーンも珍しくないが、あくまでフィクションだ。一方で世界にはテロの脅威におびえ、穏やかな市民生活を営めない地域もある。わが国の尊い平和が、いつまでも続いてほしいと願う。
(2016/7/28 05:00)