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(2016/8/15 05:00)
【全国にカスタマーエンジニア配置、震災で手腕】
情報システムは企業の中枢を担っており、災害などで障害・毀損が生じると、経営に多大な被害を及ぼす。これを最小限に抑えるため、富士通エフサス(川崎市中原区、高萩弘社長、044・874・6200)は、協力会社を含め6000人のカスタマーエンジニア(CE=保守・運用要員)を全国に配置し、客先の情報システムを24時間体制で守っている。4月の熊本地震でも、その力をいかんなく発揮した。
■応援に234人派遣
熊本地震は東日本大震災のように津波被害はなかったものの、震度は阪神・淡路大震災に並ぶ規模。しかも本震と思われていた揺れが、前震だったため、1週間程度はより大きな揺れを警戒しなければならなかった。
4月14日から5月末までに、現地に派遣した応援者は延べ234人にのぼったが、「応援要員をどのタイミングで派遣すればよいかの判断が難しかった」と、高原弘子システムサポート本部CSマネジメント推進統括部長は当時を振り返る。
4月14日夜中―。熊本地震の発生を受け、富士通グループでは直ちに事業継続計画(BCP)が発令され、西日本地域を統括する大阪に「現地対策本部」が立ち上がり、社員の安否確認と客先の被害状況の確認を急いだ。富士通エフサスは、コールセンター対応に追われる一方で、応援要員の手配に奔走した。
■対策練り直し
応援準備が整い、復旧活動を本格化しようとしていた矢先、16日未明に震度7の本震が起きた。これにより、熊本支店の建物が毀損し、立ち入り困難となった。このため、再度対策を練り直し、現地対策本部を現地に近い福岡県に移した。
「建物が毀損した状況で再び地震がくると、被害が大きくなる」(安齊隆正ビジネスマネジメント本部情報セキュリティ・ISO推進統括部マネージャー)と判断。毀損した熊本支店ではなく、被害が軽微だった富士通熊本システムラボラトリ(熊本県上益城郡)内に「現地復旧拠点」を17日に設置。応援要員に加え、パートナー各社のCEやシステムエンジニア(SE)らも集結した。
福岡―熊本間の移動は大型バスを定期便で走らせ、全国拠点から集まってくる食料なども運搬した。現地ではホテルがとれず、応援要員がシステムラボラトリに寝泊まりすることになったため、エアマットや不足していた飲み水も運んだ。
「現地ではCE2人が1組となり、現場で復旧にあたった」(安齊氏)。被害の大半は机上プリンターの落下や、パソコンのモニターやキーボードの破損。スプリンクラーの誤作動や雨漏りで水損したケースもあった。
■組織力が強み
これらを教訓に、オフィス内の機器配置などを見直し、事業継続マネジメントの指針となる「BCM運用ガイドライン」に反映させた。現在「地震発生後に、建物の安全性を診断できる人材を自前で持つことも検討している」(高原氏)。
災害はいつどこで起こるかは分からない。全国に訓練されたCEを配置し、それを司令塔が的確に動かす組織力が富士通エフサスの強みでもある。
(編集委員・斎藤実)
(2016/8/15 05:00)