[ オピニオン ]

社説/食料自給率の向上−消費者目線で外食需要を取り込め

(2016/8/24 05:00)

日本の食料自給率の低迷は今に始まったことではない。農林水産省は畜産飼料用のコメを増やし、飼料輸入を減らす政策に力を入れている。しかし、より重要なのは外食や弁当類での使用を意識することではないか。消費者目線で需要をつかんでこそ、自給率向上の道が開ける。

農水省がまとめた2015年度の食料自給率はカロリーベースで14年度比横ばいの39%。生産額ベースでは同2ポイント上昇の66%だった。カロリーベースは最低水準が6年間も続く。

品目別ではコメや魚介類の自給率が高い。ただ日本人が以前ほどこれらを食べなくなる一方、飼料の輸入比率が高い牛肉などを多く消費するようになったことが、自給率低迷の原因として指摘されている。

コメ消費量が減った要因はいろいろあるが、生活スタイルの変化が大きい。共働きや1人暮らしが当たり前になり、家族そろって家の食卓を囲む食事の機会は減っている。炊飯に時間がかかり、保温時間にも限度がある米飯は、確かに現代生活に向かない部分がある。

魚介類にも似た問題がある。小骨の始末などを苦手とする若い世代にとっては、一般に魚より肉の方が調理が簡単で食べやすい。食肉価格も、ブランド和牛でなければ手頃だ。

消費者が求めているのは簡便な調理や価格の安さ、必要な量だけ使える経済性だ。最近になってようやく、無洗米や個人消費に便利なパック詰めライス、1人前の調理米などが市販されるようになった。政府としても、こうした流れをもっと後押しするべきではないか。

牛丼チェーンやコンビニエンスストアのおにぎりなどに使う業務用のコメ開発も、一層の支援が必要だ。業務用はコストを重視する分、多収量が不可欠。同時に電子レンジで温めるとおいしいなどの専門特性が求められる。小麦ではうどんやラーメン、ちゃんぽん向けの専用品種が開発されている。

消費構造や消費者の生活スタイルは大きく変化した。生産者の目線から自給率向上を考える従来の政策には限界がある。

(2016/8/24 05:00)

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