[ オピニオン ]
(2016/9/5 05:00)
三菱航空機(愛知県豊山町)が開発中の国産小型旅客機「MRJ」が、飛行試験のための米国への移動で足踏みしている。新たな事業領域への挑戦は、こうしたハードルをひとつずつ乗り越えなければ成功しない。約束した納入時期に影響しないよう、慎重かつ迅速な問題解決を望みたい。
三菱航空機は8月中に、MRJ試験1号機を米国ワシントン州の空港に出発させる計画だった。しかし離陸後に空調システムの不具合が見つかり、2度にわたって出発地へ引き返した。今後、空調システムの部品交換が必要になることも考えられ、準備が長引けば米国での飛行試験の開始は当初予定の9月から10月以降にずれ込む。
2018年半ばとする量産初号機の納入時期を考えれば、今後の飛行試験はタイトなスケジュールになる。しかし安全性を最優先し、原因究明と対策に取り組むとした三菱航空機の判断は尊重すべきだろう。同社は今回のトラブルによる納期遅延はないとしている。
このトラブルでMRJの信頼性が揺らいだと判断するのは早計だ。MRJは燃費効率の高さなど性能面で優位に立つほか、機内の快適さなどの新たなコンセプトで業界から高い評価を得ている。トラブル発生後の8月31日に、米エアロリース(フロリダ州)から最大20機受注する正式契約を獲得するなど、高い競争力は失われていない。
MRJの機体は、日本の最新技術を結集したものだ。生産拠点に近い中部地方では、航空機部品事業への参入が相次いでいる。最近も岐阜県の中小企業4社が地元銀行の主導による共同受注組織を立ち上げた。技術の裾野は着々と広がっており、MRJの信頼を支えている。
米国での飛行試験は約1年間かけて、量産初号機納入前の型式証明取得のため2500時間の飛行時間を確保する計画だ。飛行試験が進むにつれ、未知のトラブルに見舞われることも考えられる。ただ、そうした場合でも不具合に素早く対応し、影響を最小限に抑える技術を磨くことが大切だ。
(2016/9/5 05:00)
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