[ オピニオン ]
(2016/10/10 05:00)
10日は体育の日。国民の祝日法では「スポーツにしたしみ、健康な心身をつちかう」とある。改めて体の健康と向き合う一日としたい。
国を挙げて「健康寿命の延伸」が叫ばれる中、個人で健康を管理する「セルフメディケーション」の概念が普及・定着してきた。健康維持はなにも高齢者だけの話ではない。若い時からの運動習慣が不可欠で、心と体の健康が求められている。
日常生活に制限のない期間である「健康寿命」は、2013年に男性が71・19年、女性が74・21年だった。10年と比べて男女ともに延伸しており、平均寿命と健康寿命の差である「日常生活に制限のある期間」は男性で0・11年、女性で0・28年短縮した。
一方、高齢者の要介護の主要因でみると、男性の2割、女性の4割が「骨折・転倒」などの運動器疾患に起因していることが分かる。運動器の健康を長く維持し続けることが重要だ。
疾病の予防や治療でも運動が重要な役割を果たす。治療が難しいとされる「慢性疼痛(とうつう)」は、薬物や外科治療による多様な治療と並行して体を動かすことが欠かせないと指摘する専門家が多い。生活習慣の見直しで症状が改善するほか、治療に自ら参加するという強い動機付けにもなるからだ。
早期診断、早期治療はどんな病気やけがでも欠かせないが、まずは自らで病気を予防するセルフメディケーションの意識を持ちたい。それが国の医療費抑制にもつながる。
祝日としての体育の日は、1964年の東京五輪の開幕式に由来する。次の五輪が開かれる2020年には、75歳以上の後期高齢者が65―74歳の前期高齢者の数を上回ると予測される。社会保障費のさらなる増加は避けられない状況だ。
体育の日前後には自治体などの各種スポーツイベントも数多く企画されている。日本整形外科学会の丸毛啓史理事長は「自分の足で歩くことは人間の尊厳を守ること」と指摘する。生涯を通じて健康を維持するために、まずは一歩を踏み出そう。
(2016/10/10 05:00)