[ オピニオン ]
(2016/10/13 05:00)
♪ラッタッタ〜の音楽に合わせて『ロードパル』で颯爽(さっそう)と登場するソフィア・ローレンさん。片やスカートで両足をそろえて『パッソル』に乗る八千草薫さん。日本とイタリアの大女優が排気量50ccの原付きバイクを優雅に操る。
ふたつのテレビCMが、1980年前後に燃え上がったホンダとヤマハ発動機の“HY戦争”ののろしとなった。「店に押しかけたヤマハ発の営業マンがパッソルを前に出せば、本田宗一郎さんが直々に『うちの製品を』と頼みに来た」と、老舗バイク店店主。
因縁は深い。ヤマハ発の設立時、親会社の日本楽器製造(現ヤマハ)は宗一郎さんにアドバイスを求めた。70年代末はくしくもホンダと日本楽器の社長は実の兄弟。しかし日本楽器の社長が80年に解任されると戦争は泥沼化した。
その両社が提携した。原付一種の国内販売台数は85年のピークの8分の1以下に縮小し、存続すら危ぶまれる。両社幹部の「メーカーの社会的責任を果たす」との信念が、わだかまりを解かした。
“HY戦争”の乱売を知る老店主は「隔世の感がある」と複雑な表情を浮かべながらも「業界2強の力で、逆風の2輪車市場を変えてほしい」と訴える。戦後の「競争と協調」の質が問われる。
(2016/10/13 05:00)