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[ 医療・健康・食品 ]
(2016/10/19 05:00)
TOTOが「未病」の領域で、研究開発を続けている。排便臭のデータをトイレ内で日々取得し、腸の健康状態をモニタリングすることで病気の早期発見や健康維持につなげる取り組みだ。食事などさまざまな生活習慣のデータとクラウド上で結びつければ、大きな価値が見い出せる。情報通信技術(ICT)の発達で、研究は新たな段階を迎えている。(斎藤正人)
「排せつ物はゴールデンデータだ」(福田幸弘TOTO上席執行役員総合研究所長)。排便時に発生するガス成分は、およそ1000種類あるという。ガス成分の種類や濃度、比率などのデータを取得し、組み合わせることで腸内環境を推測できる。
疾患の発見にも役立つ。例えば、複数の種類の大腸がんに関して、腫瘍の大きさを推測できることが分かってきている。
トイレは誰もが必ず使う。日々のさりげない行為でデータを蓄積できる。データ収集のためのセンサーは、トイレの脱臭機構に組み込めるため、大がかりな装置は必要ないことも、大便臭を活用するメリットだ。
ただし、実用化にはいくつかの壁があることも事実だ。顧客が「測定自体にお金を払うということはない」(同)。このため「確実に効果を見込める指標として活用できるかどうか」が課題となる。
TOTOがトイレ空間で健康をチェックする試みを始めたのは1980年代のことで、30年近い歴史がある。近年では大和ハウス工業と共同開発した「インテリジェンストイレ」が有名だが、当初期待されたほどの販売成果は上がっていないようだ。要因の一つは、トイレ空間で得られるデータだけを単体で利用する「スタンドアローン」の形になっていたこと。食事データなどと組み合わせることができる「使いやすい形のプラットフォーム(基盤)をつくること」(同)が重要だ。
クラウドコンピューティング技術の発達により、ひと昔前に比べると基盤の構築はかなり容易になった。ビッグデータ(大量データ)解析や人工知能(AI)の技術を駆使することで、さまざまな生活データから思わぬ相関関係を発見できる可能性もある。
今後は大腸がんだけでなく、さまざまな事例を提示することで協業する相手を増やす考え。すでに2年ほど前から通信事業者などと組み、ビジネスモデルの構築に向けて協議を進めている。具体的なゴールは未定ながら「何十年も先のことではない」(同)。ICTのショーケースとも目される20年の東京五輪・パラリンピック開催が「一つのきっかけにはなるだろう」(同)と期待している。
(2016/10/19 05:00)