[ オピニオン ]
(2016/10/31 05:00)
「(静岡県)湖西市にはスズキもある。仲良く日本のためになるよう頑張っていきたい」。30日は湖西生まれでトヨタ自動車グループの創始者、豊田佐吉翁の命日。2年前の顕彰祭で、名誉会長の豊田章一郎さんはそう話した。
あるいは、これも予兆だったのか。両社が提携協議をはじめた。本社が近く、創業家同士の親交も深いだけに「しかるべき場所に落ち着いた」と業界筋は冷静にみる。
しかし海外メディアには「奇妙な提携会見」と映ったそうだ。具体策なしの提携をトヨタ社長の豊田章男さんは「仲間づくり」と表現。スズキ会長の鈴木修さんは資本提携について「せっかちな質問ですな。ゆっくり考える」と煙に巻いた。
スズキにとってトヨタは近くて遠い存在。長年、軽自動車の覇権を争うダイハツ工業はトヨタの子会社だ。ただ米ゼネラル・モーターズ、独フォルクスワーゲンと2度の“結婚と離婚”を繰り返した鈴木さんも86歳。最後のパートナーに最も古いなじみを思い定めた。
発表資料には「章一郎トヨタ名誉会長にまず相談」という異例の文言。極めて日本的なアプローチで距離を縮めた両社が、これをどんな関係に発展させ、世界と戦っていくのか。しばし目が離せない。
(2016/10/31 05:00)