[ オピニオン ]
(2016/11/1 05:00)
科学技術振興機構(JST)が創設20周年を迎え、4日に記念式典を開く。これまで“ノーベル賞級”を目指す基礎研究や産学連携の開発研究で大学・研究機関を広く支えてきた。社会の豊かさの創出に向け、基礎と応用の双方を担う独特の存在として今後も活躍してほしい。
国立研究開発法人であるJSTは日本の科学技術政策の中核的実施機関だ。大きく二つの事業があり、一つは世界トップ級の基礎研究支援。もう一つが実用化に向けた産学連携の開発研究支援だ。例えば近年ノーベル賞を受賞した研究のうち青色発光ダイオードやiPS細胞(人工多能性幹細胞)などを基礎から開発まで支援してきた。
もっとも2016年のノーベル生理学医学賞が決まった東京工業大学の大隅良典栄誉教授の「オートファジー」の研究は、JSTではなく同じ政府系機関の日本学術振興会(JSPS)が配分する科学研究費助成事業(科研費)の成果だった。
科研費は研究者の自由な発想を支援する学術基礎研究のための公的投資。科学の芽を見つけ出す研究者にとっての「おもしろい研究」が対象となる。その対極にあるのが企業が拠出する産学共同研究費だ。製品化によって利益を期待できる「役に立つ研究」に投じられる。
JSTの事業は、この両者の中間に位置しているのが特徴。国の科学技術政策を背景に「おもしろい研究」と「役に立つ研究」の双方を支援する。
ここで重要なことは成果を長期視点でみていくことだ。JSTの浜口道成理事長は「ノーベル賞案件も最初の成果発表は著名な論文誌でなく、引用は少なめだ。(研究の)影響力は長期で評価する必要がある」と強調する。同時にイノベーション創出についても「社会構造を変えるものだけに、長期的視点で見なくてはいけない」と話す。
「おもしろい」か「役に立つ」か。研究開発としてみれば、どちらか一方だけでも社会的な意味がある。その両方を追求するというJSTの理念は貴重だ。今後もさまざまな成果を期待する。
(2016/11/1 05:00)
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