[ オピニオン ]
(2016/11/21 05:00)
創立70周年を迎えた経済同友会が、新ビジョン「Japan2・0 最適化社会に向けて」を策定した。現代の経済・社会システムを根本から考え直そうという前向きな姿勢には、学ぶべきものがある。
新ビジョンでは、第二次大戦後の成功体験を基盤とした現在の社会を「Japan1・0」と定義。より本質を見つめ直し、戦後100年となる2045年に向けて目指すべき社会像としての「Japan2・0」構築に動きだすという。
具体的には、成熟社会では必ずしも国内総生産(GDP)の成長が豊かさに結びつかないことを指摘。またグローバリズムによる各国の「統合」が進んできた中で、その反作用として英国の欧州連合離脱や米国のトランプ次期大統領に代表される国家利益重視の世論など「分散」の動きが台頭していることに着目した。これらの矛盾を最適化することで、将来の社会の方向性を見つけようとしている。
壮大な問いかけであり、理論派経営者として知られる小林喜光代表幹事(三菱ケミカルホールディングス会長)が自らの問題意識を同友会の仲間にぶつけたものだ。むろん、簡単に答えの出る問題ばかりではない。場合によっては空理空論に過ぎると批判されることもあろう。
しかし欧米企業の後を追い、事業規模と利益の拡大を目的にすればよかった過去と異なり、現代の企業経営者は、時には正反対の複数の目標を同時に達成することを求められる。
その過程で目標を見失い、守旧的な「生き残り」だけを考えるようになってしまう懸念もある。日本企業の一部に、かつてのようなダイナミズムがなくなったことが「失われた20年」の大きな要因ではないか。
世界の経済や社会の姿が急速に変わりつつある中で、同友会の問いかけは、経営者が自分の頭を整理し、将来の方向性を考えるきっかけとなるものだ。現状に甘んじて変化をやり過ごすのではなく、社会のありようを根本から問い直すことは、企業が生き抜いていく意思に通じる。その意欲に学びたい。
(2016/11/21 05:00)
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