[ オピニオン ]
(2016/11/22 05:00)
個人消費が依然として回復しない。安倍晋三首相は、2017年で4年連続となる“官製春闘”の賃上げが消費を喚起し、経済の好循環を実現する呼び水になると期待する。だが賃上げだけで、長く続く家計の節約志向を改めるのは難しい。家計や企業が抱く将来不安を払しょくする施策を政府に求めたい。
首相は産業界に対し、4年連続のベースアップを求めた。だが企業の収益環境は厳しい。足元では円安傾向の「トランプ相場」だが、これもいつまで続くかは不透明だ。世界経済の先行き不安はくすぶり続けており、労使交渉の回答は前年より小粒にとどまる懸念もある。
賃金が伸び悩めば、個人消費の浮揚はますます困難になる。賃上げだけを期待するのではなく、消費停滞の本筋を見つめ直す必要があるのではないか。
0%台とされる低い潜在成長率を引き上げなければ、日本経済の将来に展望を抱けない。また主要国中で最悪の財政事情の中、社会保障制度の将来に対する不安は、いつまでも重くのしかかっている。
働き方改革を含めた成長戦略を深化させて潜在成長率を引き上げつつ、社会保障の持続可能性を高める。遠回りのようでも、それが消費喚起に向けた正しい道ではないか。
しかし17年度税制改正の焦点だった所得税改革では、政府・与党の議論は後退した。女性活躍と所得増を促す配偶者控除の廃止は見送る方針が決まり、働き方改革への踏み込み不足の感は否めない。あるいは近い将来の解散・総選挙の思惑があるのだろうか。
官邸と産業界は“車の両輪”として、日本経済をけん引することが期待される。だが官邸の賃上げ頼みが先行し、政策上の措置が後手に回るようでは両輪のバランスを欠く。政府の成長戦略の一段の推進、さらに財政規律を重視した予算編成により、家計と企業のマインドを向上させていく必要がある。
なぜ個人消費の停滞が長引いているのか。賃上げばかりに焦点を当てていては、いつまでも消費喚起は望めない。
(2016/11/22 05:00)
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