(2016/11/28 12:00)
日刊工業新聞社は日本RPA協会との共催により、電子版セミナー「テクノロジーで変わるホワイトカラーの働き方-労働生産性に与えるRPAのインパクト」を10月20日に東京ビッグサイトで開いた。人間が行っていた作業を代替するロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)や人工知能(AI)、ビッグデータ解析といったテクノロジーの進歩によって、働き方がどう変わっていくのかについて議論が交わされた。
基調講演として経済産業省商務情報政策局の佐々木啓介サービス政策課長が登壇し、RPAやビッグデータ、AIなどの利活用が進む第4次産業革命を踏まえた政策の方向性について語った。
続いて日本RPA協会の田中淳一専務理事(KPMGコンサルティング パートナー)は「テクノロジーで変わるホワイトカラーの働き方 RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)・デジタルレイバーによる労働生産性へのインパクト」と題して講演した。
【大角暢之代表理事(RPAテクノロジーズ 代表取締役社長)によるRPA、および日本RPA協会の説明】
RPAという言葉は今年に入って、バズワードとして日本に入ってきた。私は10年くらい前から、RPAソリューションである「BizRobo!」をロボットソーシングという概念で提供してきた。RPAはこれまで人が行ってきた定型作業や、予測や分析などが必要なさらに高度な作業を代行する取り組みであり、日本が強みを発揮し世界でも勝てる分野だと考えている。
RPAの歴史について紹介すると、2年ほど前から欧米で定義され、日本でも今年に入り急速に外資系のコンサルティング会社の多くがRPAを活用したビジネスを始めた。まさに世界同時多発的にRPAブームが起こっている状況にある。
7月20日に日本RPA協会を立ち上げた。ソフトウェアロボット、デジタルレイバーと呼ばれるRPAを活用し、日本の社会問題である少子高齢化による労働力不足の解決や、皆さまの会社の競争力向上に貢献したいと思っている。さらにはRPAを使った新たな事業創造、雇用創造をゴールとしている。今後はエンドユーザーを含めたさまざまなノウハウを幅広く公開し、ナレッジを共有していきたい。具体的には書籍の発刊や事例の共有会などに取り組んでいきたいと考えている。
【パネルディスカッション要旨】
続いて行われたパネルディスカッションでは、RPAの導入場面、AIやデータマイニングなど新たなテクノロジーとの関係、人の働き方などについて議論が交わされた。(敬称略)
進行役 どのような場面でRPAが導入されるのか
大角 一番多いのが投資対効果が見込めずシステム開発案件から漏れたもの。例えば、企業が新システムを導入した際に、旧システムからデータを移行するような作業がある。データを移行するシステムをつくることができれば別だが、投資対効果が見込めないため人が手入力を行っている。また、企業の合併統合により同じ内容を二重入力しなければならない場合などにも当てはまる。そのような不毛なルーチンワークがあるところに導入していきたい。
田中 事務処理が多いところが効果が出やすいため、導入しやすいと考えると、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)されているところ、もしくは定型的な業務を人手により実施されているようなところ。既にシェアードサービス化されている会社や部門にも入りやすい。ポイントは業務を虫食いの様に単独で見てRPA化していくのではなく、部門・会社全体など、広い範囲を見すえた検討を行うことで、大きな効果を創出することができる。
事業会社 IT業務が進んでいる部門ですら一週間で296のシステム化されていない業務が出てきた。これらは投資対効果が出ないため、人海戦術で対応していたところ。今、RPAに対する期待が本当に高まっている。
RPAはこれまで人手に頼っており、投資対効果からみてシステム化をあきらめていたような業務に導入できるとの見方が示された。
進行役 ロボットに置き換えられた仕事をやっていた人は、どのような役割を担えばよいのか。
大角 これまでの事例で、人の仕事が奪われるから断念しようという会社は1社もない。例えばアパレルでは、服を売ることが本来の業務であって、発注書や伝票の処理は極力避けたい業務。服を買い付けに行くといった、やりたい仕事に専念できるようになる。
田中 システム化されていない人がやっている仕事はどんどんロボット化されていく。ただし、それで人の仕事がなくなるわけではなく、役割が変わる。例えば、管理の仕組みを人が考え、実行することで、現場の人とロボットのマネジメントがやり易くなるなどがある。今まで現場で仕事をされていた方は、現場での業務を深く理解しているはずなので、その知識をもとにロボットを作って行く役割も期待される。
事業会社 多くの従業員の仕事が軽減されたのは事実。ただ、それによって契約の雇い止めは一切発生していない。職員が入力業務を管理するといった定型業務から解放され、精神的にも物理的にも余裕ができた。
RPAの導入経験を振り返り、伝票処理などのルーチンワークから解放された人は、本来やるべき業務や新たな管理の仕組みの構築といった、より生産的な業務に従事できるようになるというのが、共通した答えだった。
進行役 AIやデータマイニングなどとRPAの関係についてどう見るのか
田中 いわばRPAは手足、AIは大脳新皮質、ビッグデータは海馬という様に、人間同様、全体として組み合わされて活用されることで更に大きなことが出来る様になっていく。例えば、AIによる学習を通してルールを作っていくことで、RPAの構築部分も楽になり、さらに加速していくのではないか。
事業会社 完全にロボットやAIに置き換えてしまうのではなく、いくつかの業務をロボットに置き換え、それを人がコントロールする。例えばコールセンターの入り口のようなところでAIが導入されていくのではないか。
大角 現在RPAで手足の代行はできるが、今後は知能の代行もやらせるという発想で私は取り組んでいる。日本では現場にアイデアがあると思うので、そういったものをマシンラーニング、アルゴリズムを使って実装していけるだろう。特に流通関係の欠品予測や、定期購買型の顧客に対して、購買履歴をとって予想をし、アイデアをマシンラーニングで実装していくということを狙って動いている。
RPAというのは、人間の作業を代行する「レイヤー(層)」だと思っていて、世界的に見てもデジタルレイバーという言葉は共通である。イメージとしては(ソフトウェア上で動くロボットを)新しい労働力として無制限に作り、雇用していくようなものだと考えている。
大角代表理事は、RPA=デジタルレイバーを導入することは、人と機械(コンピュータ)という2層構造から、人に代わって不眠不休で働くロボットという「新たな層」が加わることで、「人」、「ロボット」、「機械」という3層構造に企業の現場が変わっていくとの見通しを示して締めくくった。
(2016/11/28 12:00)