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[ 化学・金属・繊維 ]
(2016/12/16 05:00)
鉄鋼大手の1トン当たり1万円という鋼材値上げに、鉄鋼関連メーカーが頭を悩ませている。材料となる鋼材の仕入れ価格上昇分を自社製品にどこまで転嫁できるかが見通せないためだ。多くはすべて転嫁する前提で予算を組んでいるが、顧客の理解が得られなければ収益性は悪化する。さらに、ここに来て鉄鋼大手がほぼ同じ幅で追加値上げの動きをみせており、状況は厳しさを増している。(編集委員・大橋修)
ドラム缶大手の日鉄住金ドラム(東京都江東区)の小原知実社長は「これをユーザーにどう受け入れてもらうか。非常に難しい」と正直に打ち明ける。春にも一度、鋼材の小幅な値上げがあり、その転嫁の交渉も進めつつあっただけに「さらなる値上げで、いよいよ困っている。誠心誠意説明中だが、幅も大きいので丁寧に交渉している」と悩ましげだ。
【反転に成功】
日鉄住金鋼板(同中央区)は、2016年上期(4―9月)に“陥没価格”と呼ばれるほど落ち込んだ価格を下げ止め、反転させることに成功。「(今回の値上げ局面より)前倒しで値上げできたのが当社としては非常に大きかった」(細貝清司社長)とひとまず安堵(あんど)する。
とはいえ、これからは今年2度目の値上げを顧客にのんでもらう必要がある。「上げないと当社の利益が吹き飛んでしまうが、正直厳しいものと覚悟している」(同)と身構えている。
東洋鋼鈑は上期こそ交渉で原板の調達価格が上がらずに済んだが、(10月以降の)下期は状況が一転。交渉で原板の上げ幅を「なるべく圧縮するよう努力し、製品価格にも転嫁する。だが、トータルでは材料価格が先行するので業績は悪くなる」(隅田博彦社長)と想定する。東京製綱は「原料高の業績影響はニュートラル。まずは調達価格が上がらないよう交渉で頑張る。製品にも基本は転嫁していく」(中原良取締役執行役員)方針を貫く。
【特殊鋼にも波及】
影響は本来、鉄スクラップが主原料の特殊鋼にも波及している。三菱製鋼は北海道室蘭市の工場で新日鉄住金から高炉原料を仕入れている関係で、コストが急上昇。同社の場合、原料価格の変動から製品価格に反映するまで、約半年の時差が生じるため「最終的には(コスト上昇分を)取り返せるが、決算的には厳しい」(佐藤基行社長)として、17年3月期の業績予想を下方修正した。
【改善に期待】
対照的に、JFEグループで仮設鋼材の賃貸事業が主力のジェコスは「鋼材が上がれば賃貸価格も上げられるかもしれない」(藤田真取締役常務執行役員)と語る。
15年夏ごろまで改善基調をたどっていた価格水準も、「工事量の低迷で最近は上がったり下がったり。鋼材が上がれば改善の要素になる」と期待を寄せる。
(2016/12/16 05:00)
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