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[ 科学技術・大学 ]
(2017/1/12 05:00)
筑波大学大学院システム情報工学研究科の佐久間淳教授らは、患者などの遺伝子データを暗号のまま統計処理できる秘密計算技術を開発した。複数の医療機関で連携すると、各機関は個人情報を外部に開示しなくても、遺伝子変異と疾患の関係などの解析結果を得られる。解析対象となるデータが飛躍的に増えるため、難病や希少疾患などの研究に貢献するほか、患者の遺伝子に応じ、薬剤を使い分ける「個別化医療」の進展も期待できる。
全遺伝情報(ゲノム)は将来の疾患リスクや才能などと関連づけられることがあるため、万が一漏れれば被験者への悪影響は大きい。個別化医療の発展にはゲノムデータが不可欠。現在は、がんなどの特定の遺伝子しか検査されていない。
今回、準同型暗号という技術で、遺伝子や症例データを暗号のまま解析した。統計的な有意差を客観的に見分けられる「カイ二乗検定」の計算が半日程度で終わる。スーパーコンピューターなど、特別な計算資源を持たない研究機関でも運用できる。
医療機関が患者から包括的な研究利用の許諾をとれば、個人情報を漏らさずに複数機関のゲノムデータを統合して解析できる。解析機関にはデータの中身はわからず、医療機関には統計処理した結果のみが渡されるため、患者はプライバシーを守れる。希少疾患の原因遺伝子の特定や、生活習慣病と遺伝子、生活習慣との対応などを分析しやすくなる。
筑波大にサーバーを設け、17年中の秘密計算環境の提供を目指す。
(2017/1/12 05:00)