[ エレクトロニクス ]

挑戦する企業/ソニー(1)進化する「創業のDNA」−全事業の分社化完了

(2017/1/17 05:00)

  • 米ラスベガスで開かれたCESでは感性に訴える「ソニーらしい」新商品を披露した(ソニー提供)

ソニーがいよいよ復活のステージに立つ。約10年間続いた構造改革にめどを付け、2016年3月期に3期ぶりの黒字転換を達成。4月には全事業の分社化というポートフォリオ変革も完了する。12年に就任した社長の平井一夫が一貫して唱え続けてきた言葉は「ソニーを変える」。創業以来のDNAは守りつつも、激しく変化する環境に適合した“新生・ソニー”は成長に向けた一歩を踏み出した。

【生み出す風土】

「ただ建て替えるだけじゃ面白くないよね」。開業50周年を迎え、3月にいったん閉鎖する東京・銀座のソニービルの建て替え案を議論する中、平井にメンバーの視線が集まった。「もっとソニーらしくやろうよ」。

この言葉が18年夏―20年秋まで敷地を公園として開放し、その後新たなビルを建設するプランを生んだ。平井は最近、構造改革で萎縮した「ソニーらしさ」を生み出す風土を取り戻しつつあると感じている。

【早く出せ】

ソニーの構造改革は売上高の65%超を占めるエレクトロニクス部門の立て直しの歴史だ。12年以降、事業の売却や縮小、全事業の分社化などを実施。14年度のテレビ事業の11期ぶりの黒字化を端緒に、エレキ部門は15年度に5期ぶりの黒字化を果たした。同時に事業間融合とボトムアップによるイノベーション創出の基盤を整え、成長の布石を打った。

開発現場では平井が「とにかく早く出せ」と鼓舞する姿が頻繁にみられる。13年に始動した新コンセプトの製品を開発する「ライフスペースUX」や、14年に設立した新規事業創出プロジェクト「SAP」は社長直轄で活動。新しいことをしたい社員の受け皿として機能し始めている。

イノベーション創出を支えるのが事業間融合だ。かつては各グループの独立心が強く、隣が何をしているか分からない風土だった。事業トップも毎年のように変わった。

しかし12年以降の顔ぶれに大きな変更はない。「今は事業の壁を越えて膝をつき合わせて議論する場面が当たり前」。事業トップや現場の社員からは、こんな言葉がよく聞かれる。半導体事業とカメラ事業の融合は高画質デジカメ「αシリーズ」の成功につながり、開発設計部門とテレビ事業の連携は厚さ4・9ミリメートルの4Kテレビを生み出した。

ソニーらしさとは何か。平井は「一言で言えば『ワオ!』と言ってもらえる商品やサービス」と断言する。

【生まれ変わる】

今のソニーが志向するのは規模のビジネスではない。「感性に訴える商品」(平井)やコンテンツやサービスなどで継続的に稼ぐ「リカーリング型ビジネス」など、新たな収益モデルの確立を急ぐ。

16年の株主総会で平井は創業者の井深大が起草した「設立趣意書」を提示し、創業のDNAの継承と進化を宣言した。それを目に見える形で示せた時に、ソニーは真に生まれ変われる。(敬称略)

(2017/1/17 05:00)

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