[ オピニオン ]
(2017/1/23 05:00)
官に対して、大学は素朴で従順なだけではいけない。自立の意識を高める必要がある。
文部科学省が組織的に、元幹部の再就職を大学に求めた今回の事件は、多くの大学にとって非常にショッキングだった。
文科省と大学は、秩序だった上下関係にある。綿密な指導を受ける大学が、文科省に「従う」形になりやすい。教員や研究者の学問の内容は別としても、大学当局の事務運営はそうした傾向が強い。
文教・科学行政の経験者を受け入れることは大学にとってもメリットがある。例えば大半の国立大学は、事務担当理事など役員を文科省から迎えている。行政の細かな指示を大学が理解する上で、必須の存在というのが実情だ。
問題になった今回のケースは、こうした通常の人事とは異なる退職後の私立大学への再就職だ。しかし大学側は深い疑問を持たなかった。手続きが適切かどうかを文科省に問い合わせ、「問題ない」との回答を得て受け入れを決めた。最も責任を問われるべきは文科省だが、大学側も、あまりにもナイーブだった。
民間企業の場合、例えば公共事業の受発注を巡っては利益供与の関係が生じやすい。官庁人材を企業が受け入れる場合でも、一定の緊張関係のもとに慎重な判断をするのが常識だ。
大学は国立であれ私立であれ、助成金や許認可で国が直接、関与するケースが多い。官と学の関係は官民関係と同一視はできない。しかし多数の大学が社会的ルールについて「文科省がいいという以上、自ら把握する必要はない」と考えるようであれば、今回のような問題の再発は防げまい。
今、大学に求められているのは、社会の声に直接、応えるような自立した存在へと自らを改革することである。研究内容や学生の教育、そして大学経営においても、社会の要請を理解し、成果を上げていかなければならない。素朴で従順なことは、決してほめ言葉にはならない。大学には、古きナイーブさを捨て去ってもらいたい。
(2017/1/23 05:00)
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