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深層断面/安定か破滅か−中小企業の社長28人に聞く、トランプ政権の見方

(2017/1/23 05:00)

  • トランプ米大統領=21日、バージニア州(EPA=時事)

  • トランプ米大統領(右)とメラニア夫人(20日、ブルームバーグ)

トランプ米大統領が環太平洋連携協定(TPP)離脱や北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉を表明し、日本の中小企業にも波紋が広がっている。関税や為替の先行きに不安の声が上がる一方、新政権の政策に一喜一憂せず、世界経済の新たな局面に立ち向かおうとする果敢な経営者の姿が垣間見える。

北海道バイオインダストリー・村上季隆社長(札幌市豊平区、健康食品開発・販売)/中小にチャンス

実際に始まってみないとわからない。今までのやり方で米国が疲弊している面もあり、トランプ氏が選ばれた。それでだめなら修正もあるだろう。むしろ中小企業は、この大きな変化が新たなチャンスとなるかもしれない。

岩鋳・岩清水晃社長(盛岡市、南部鉄器製造)/円高に不安

米国向け輸出が売り上げの3割を占める。円高で推移するとの見方もあり、不安だ。1ドル=100円を割れれば売り上げに影響が出る。日本政府には円高に備えた中小支援策を期待する。

小野精工・小野宏明会長(宮城県岩沼市、精密部品加工)/耳を傾けて

期待するとすれば経済効果だが、各国でも評価は分かれている。日本は政策的に安定しているのであまり心配していないが、産業界への影響に懸念がある。トランプ氏には世界情勢に耳を傾けてもらいたい。

ティー・エム・ピーの高橋一雄社長(茨城県日立市、自動化機器製造)/冷静に見極める

経済面で世界的に保護主義が加速することを懸念する。発言に一喜一憂せず冷静に見極めることが大事。トランプ氏は政治経験のない経済人。日本側も取引の要件を用意して対応するのが良い。

石井機械製作所・石井大洋社長(栃木県足利市、輸送機械部品製造)/輸出産業は直撃

輸入関税の増税が考えられる。日本からの輸出は厳しくなり、自動車産業は直撃を受けかねない。ただ、企業存続の絶対条件は「変化への対応」だ。何が起きても対応できる「環境適応力」が一層求められるだろう。

中島自動車電装・中島朗社長(群馬県伊勢崎市、環境機器製造・販売)/資質に疑問

大国のリーダーとしての資質に疑問を抱く。政治経験がないばかりか、公の組織を動かした経験もない。自信家で何をやり出すか、わからない。時間をおいて様子を見ないと、日本政府も手が出せないのではないか。

暁峰・小林翔社長(埼玉県春日部市、発光ダイオード製品製造)/全く読めない

直接的な影響は現時点でないと見ている。しかし保護主義に向かうのか、状況に応じてすぐに方向転換をするのか先が全く読めない。これまでに強い口調の発言もでており、何があっても良いように準備はしていく。

ネステック・月岡周郎社長(千葉県習志野市、計器製造)/セールスマンだ

偉大なるセールスマンだ。良い側近に委ねれば政局としては面白い。世界が様子見状態だったが、多くのことが動き出すだろう。ただ、製造業が米国に戻るとは思えない。米国は米国民だけで成立しているわけではない。

アポロ製作所・白井健一社長(東京都荒川区、特殊印刷)/打撃回避を

自国の利益を優先させる保護主義的な政策により日本の貿易、特に自動車産業が打撃を受ければ、それを支える中小への影響は計り知れない。安倍首相は米国に働きかけ、かじ取りをしっかりしてほしい。

山田マシンツール・山田雅英社長(東京都台東区、刻印機製造、工具商社)/見直すチャンス

さまざまな課題はあるが、TPP離脱方針を表明したトランプ政権に期待している。グローバリズムは行き過ぎている感が否めない。ここで立ち止まり、見直すチャンスだ。

西尾硝子鏡工業所・西尾智之社長(東京都大田区、硝子・鏡加工卸、内装工事)/IoT投資進む

現在の米国は、生産が海外に流れて仕事が減った日本に似ている。生産性を向上しないと技術は国内に戻らず、雇用を戻すのは簡単ではない。IoT(モノのインターネット)などの投資が進むだろう。日本の技術を輸出できるという期待はある。

レバレジーズ・岩槻知秀社長(東京都渋谷区、人材メディア業)/懸念消えた

医療、介護、インターネットの人材領域で需給の変化はさほどないだろう。TPP離脱表明により、医療業界の懸念も消えた。二国間協定を迫られる可能性があるが、内容次第で業界に対する変動要素になりかねない。

マス商事・升杉夫社長(横浜市港北区、電子機器向け生産設備販売)/計画に変更なし

昨年4月にメキシコ進出したが、事業計画に変更はない。将来は同国を拠点に中南米で販売を広げたい。トランプ大統領はNAFTAの再交渉を表明したが、米議会がどう動くか様子を見たい。

大和ケミカル・中村幹夫会長(神奈川県厚木市、ゴム・プラスチック部品製造)/一喜一憂せず

米国のトップは世界のトップ。最高経営責任者の感覚で自国の損益だけを考えていれば良いわけではない。経営環境は日々変わる。トランプ氏の発言に一喜一憂せず自分の経営理念を貫くことが大切だ。

TRINC・高柳真社長(浜松市西区、除電器開発)/関税に不安

メキシコでは自動車関連など仕事量は増えているが、関税の不安もある。偏り過ぎないよう営業担当者に指示した。英国の欧州連合(EU)離脱を支持する発言を懸念している。秩序ができたEUが再び分裂しないことを願う。

鬼頭精器製作所・鬼頭明孝社長(愛知県豊田市、金属部品加工)/施策に興味

振り子は大きく振れた方が良い。低賃金を求め工場が海外に移る中、製造業をどう守り活性化させるかは日本にも共通した課題。米国ではこれまで議論が曖昧だった。今後のより具体的な施策を興味を持って見守りたい。

名古屋精密金型・南谷広章社長(愛知県東浦町、金型設計・製作)/長期ではひずみ

米国に雇用が増える一時的な効果はあるが、保護主義に傾けば長期的にはひずみが生じる。世界経済にマイナスだ。鎖国政策で発展した国はほぼない。世界の発展にはグローバリズムが必要だ。

アイオー・エムの原田惠三社長(愛知県小牧市、樹脂製品製造機械販売)/米経済が波及

株価の一時的な落ち込みはあっても長くは続かないだろう。不透明感から日本国内の設備更新は慎重な動きだが、米国経済が活性化するに伴って大手企業が需要を取り込み、中小企業にも波及するとみる。

ダイネツ・葛村安弘社長(堺市堺区、金属熱処理)/日本企業に出番

仕事の半分は自動車関連で、米国が保護主義になると不安。しかし大型インフラ投資を表明しており、減税も実施して景気がよくなれば、世界経済もよくなる。インフラでは日本の企業にも出番が来るだろう。

森田ライト工業・森田洋社長(大阪府守口市、プラスチック成形加工)/高関税に不安

自動車部品を手がけており、影響を受けそうで不安だ。輸入に高い関税を課すと言うが、対抗措置が実施されれば、米国拠点を移す企業も出るのではないか。日本は米国に頼りすぎない独自の方向性を示すべきだ。

富士テクノ工業・生信剛社長(大阪府枚方市、精密ポンプ製造販売)/格差直視を

株高になり、製造業を米国内に戻そうと強硬な態度も目立つ。それは持続できるのだろうか。高い輸入関税を課すと米国は悪性インフレになりかねない。米国の問題はマネーゲーム、貧富の差の拡大にあると思う。

片岡製作所・片岡宏二社長(京都市南区、レーザー加工装置製造)/枠組みおかしく

トランプ氏の世界経済に対する考え方を見ていると、枠組みがおかしくなるのではと不安になる。当社の米国ビジネスは拡大を続けているため、しっかりとした対応力を付ける。

神戸デジタル・ラボの永吉一郎社長(神戸市中央区、ネット事業の技術支援)/今後が楽しみ

今後が楽しみ。バタフライ効果のような現象が起こるのではないか。安定か破滅か、今のままではいられない。うまく立ち回ったから今の日本があると50年後に言えるような外交を日本政府に期待したい。

ホーコス・菅田雅夫社長(広島県福山市、工作機械製造)/国際感覚磨け

地方の中小企業も今は国際化で為替変動の影響は大きい。世界一影響力のある立場としての発言を望みたい。トランプ氏の製造業重視の姿勢は評価でき、国際感覚に磨きがかかればビジネス界出身として期待したい。

ファインテック・本木敏彦社長(福岡県柳川市、機械用刃物製造)/経営センス期待

ビジネスの実績はあるが政治の世界は未経験。最初は政治とビジネスをうまく分け、ブレーンの支えにより徐々に政治手腕を高められたらいい。経営センスと融合して新たな化学反応が生まれる。

本多機工・龍造寺健介社長(福岡県嘉麻市、産業用ポンプ製造)/景気影響少ない

はっきりモノを言う米国人という印象だ。米国内の足並みが乱れているのは心配だが、景気への影響はそれほどないとみる。当面は中国やロシアなど大国同士でチェスのような探り合いを続けるのだろう。

滲透(しんとう)工業・西亮社長(長崎県時津町、表面処理)/右往左往しない

大統領の発言や行動に右往左往すると軸足がぶれる。国や企業は発言をマイナスに捉えるのではなく、起きたことに対応できるよう準備すべきだ。日本政府には安全保障にきちんと取り組んでほしい。

日本建装工業・池辺和寿会長(大分市、省エネ機器輸入販売)/手腕に期待

実業家としての手腕に期待する。米国製品を輸入する当社としては追い風になるのではないか。日米政府間では難しいこともあるだろう。一方でビジネス的発想で新たな突破口を開く関係づくりもできるはずだ。

(2017/1/23 05:00)

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